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【右丁】
枯果て一 ̄ト ふく有つく柳かな 静雨
けふもくたらぬ冬の川ふね 宗匠
此翌日地震に家潰れ其身死し息子は危くして残る彼句は前
兆になれるかと云々
向両国垢離場の茶店話并に
浅草寺地中氷月亭にて或踊子の話
〇本所尾上町中村屋平吉か家には此夜踊子の名弘会あり催主は
猿若町なる俳優某の娘にて芸【藝】名岩井梅次とよひ十七才にな
りける由地震の前には事はてゝ世話人打寄て集金を算【かぞ】へて居
たりし時俄に震出せ【小さく送る】しかは集金凡五十余【餘】両ありしをかぞへもはてす
其母に与へしうちはや二階造の大厦【大きな家】潰れ会【會】主の梅次其外夫人幼子
【左丁】
合て十九人程死したり《割書:踊り子の内大伝馬町砂糖屋の娘もよ同妹こよといへる|も即死したり本所花町のかめといへる女と坂東みつよ》
《割書:の弟子何かしは早く逃て助りたり中村屋のあるし夫婦召仕|は門前なる大野屋と云鰻屋に在りて無事なり》彼母は悲歎の
余【餘】り逃れ出たれと夢路をたとる心地して家に帰りしにはやおのれ
か家も焼け集めたる金は途中に失ひ僅に金三歩を携へし計りとそ
俳優中村鶴蔵もこの席に列なり潰家の内に在りしか危き命をよふ
して逃のひしとぞ《割書:狂句「打どめはは階子の踊る中むらや」打留は芝居の太鼓|にあらす三十三所順礼の札打納るの諺なれと俗按によりこゝに》
《割書:は太鼓の打|どめを用ゆ》
深川 高部久右衛門殿話
〇此夜深川蛤町《割書:永代寺向の裏通にて寄せ場と唱へ|て落し話なとの人集する家なり》にも踊師匠の名弘会【會】
あり男女凡百四五十人集り居たり踊の最中に揺出して即時に家潰れ