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【右丁】
たり師匠は《割書:女|ニ》何の踊子出立しにや白無垢の小袖を着たる儘圧【壓】にうたれ
て即死す一座の老稚【「ロウチ」=老人と子供】即死怪我人数ふへからす僅に活残たるも疵を
かうむれり踊子は面に紅粉を粧ひ鬘(カツラ)を被りをどりの衣裳を着たるま
ゝ人に脊負れ逃出たるもあり其負たる人も又疵を受たりしもの也《割書:是は|踊の》
《割書:最中にて尾上町の中村屋の方よりも怪我人多く騒動甚しかりし由なり或云此|時の踊は関の戸なり桜の精に出立しか白き衣服なり是は助り黒主に出立たる》
《割書:か死し|たりと》
芝 田中権左衛門殿話
〇北品川宿弐丁目要助か地を借りて旅籠屋をなりはいとせる倉田屋
なかといふもの娘つね《割書:十五|才》地震の後家内南品川海徳寺の境内に
立退てありしに十月八日の夜夢中に白髪の老翁顕れ来る十一
【左丁】
日は水火の戦ありて安からぬ日なり此品を携へをらは其禍を免
るへしと示すと覚えて目覚たりしに八九分もやあらん大さの
滅金【めっき】の様なる羽扇の形したる物を手に持たりと依之云の噂宿
内にひろまり此日をあやふみて騒劇甚しかりしかは其地御代
官無藤嘉兵衛殿へ訴申せしかこの日更に何事なくして返たり
《割書:是虚夢か又は他人を欺んとて作り設しそらことか此後無藤氏の役所|へ召れ猥褻の流言をなして衆人の恐懼を生せし事安からぬ事とて》
《割書:いたく叱しこら|されしとぞ》
浦口清左衛門殿話
〇北條侯《割書:丸の|内》の家士何某此夜妻をめとり媒人其外も来り酒宴
に及ひしとき家潰夫婦《割書:舅姑はありや|なしや不知》其外一席皆失ぬと《割書:こゝに|雇はれ》