翻刻
哉之処毎々相触候通妄に売買不相成筋に付金具之分は金座銀之分は
銀【右上に追記】座え差出候得は品位相改相当に御買上相成候間焼金銀具取持之向は民
家幷寺院市中之無差別金銀両座え可差出候
右之趣可被相触候 十一月
地震を心察致候咄し
私蘭学の相門に橋本了三郎と申人御座候其者儀去る二日の
地震を二日の朝に知り申候私儀二日の夜宵蘭学の稽古に参り
候処其者にも出合申候處三日には下曽根金三郎大森にて打前仕候に付
俄に相弟子共申合見物に参り候約束仕候に付稽古も早仕舞仕深
尾と申人と六時頃に帰宅仕候右橋本了三郎幷南條と申人与
跡へ残稽古致居然る処何ををもひ出候や二階の雨戸をあけ空を
なかめやかて師匠木村海蔵え向ひ申候には今日は大地震も
早ここには居られ不申と申早々支度【「仕度」見消し】いたし暇乞を致し帰り申候あ
とにては海蔵はしめ何をつまらぬ事を申か大わら笑【「ゐ」見消し】致右
了三郎帰宅にて直様に父のところえ参り今日は大じゝん御座候間
御用心遊し候様を演説父も一向取用不申何を空言を述るなと
申て取用不申了三郎叔母は二階住居致し居候事故又候
御はの処え参り地震有之候間用心之事申聞候叔母の云に能
こそ地震有之候事を知らせたと申乍去未た若年にて左様の
こと申出し地震震不申節は空言申分も無之震候はゝ宜けれ
と右等事無之時は甚人口にうたはれ宜かるまし候間此後は
一せつ他人え対左様の言出なは慎み候様与しかり候間了三郎