翻刻
いたし方なく部屋え参りふせり候与存し候得共兎角に気に掛り
またまた雨戸を明空を見遣り弥々気をもみ又々父のところえ参
再応いさめ候に付父も不得止事家内のものを引つれにはえ出候
と少し立て地震故壱人も家内うちにて地震にあい不申右木村
海蔵と申人は当時松波忠之丞抱え候蘭学師匠御座候海蔵儀
忠之丞の方え参り申候には橋本了三郎はしばり可糺者に候与
申故忠之丞もおとろき何故の事哉と承り海蔵申候は二日の宵に
稽古に御出被成候処二階の雨戸をあけ空を見弥々大地震とて早々
支度被成御帰候全魔法にても遣ひ候事と申忠之丞も驚き
候事に御座候其後私事度々橋本に面会仕候間承り何を以地震
を察し候哉と申候へは了三郎申には大地震有之候前には星の
光を失ふと申儀承及候二日の宵には空何と無くもふ〳〵として
雲霧てもなく星の正体たしかに見へ光り無之右にて大じゝんの事
をしり候と私え申聞此段珍しき事候へは心得にも相成候間申上候年
齢私と同年位之人に御座候
私儀も仕合仕候いつも蘭学稽古に参り候とも夜分四ツ半頃帰【?】帰
致し候二日には如何いたし候哉不我知早く帰宅仕稽古致は
二階にて損居間地震半潰に相成例の通り稽古致居候はゝ怪我等
いたし候事と被存候
其外に地震を知り候人弐人御座候風聴承り込申候是は全
風聞故何とも申かたく候其壱人とは青山辺の武士にて大き成
石を細引にてつり二日の七ツ頃に相成候与石の何となく動出し