翻刻
壱人も不残【朱で見消し】皆々其通に【朱で右に追記】相果其内火追々に盛りになり
ていつれも【二文字朱で見消し】火炎【二文字左に朱で見消し】の中にはゐと【「灰(カイ)と」を朱で見消し】成りたるよし誠に武士
のほまれともいふへきなり【以上六文字朱で左に追記】なりしかしおしむき者共なりき事
あるには一方の働武名未世に止むへきに地震の為
かくなりし事おしむきに餘りあり地震にて死失
の者多けれともかくなるは外に聞も及はす右小屋は
如何の造りなりとも必死の場合【「所」見消し】に至りなとのかれいてん【二字左に朱で見消し】
にと申たれは去る年にて候小屋の作方は柱はいけ込にて
ことの外大造成木にてひしと貫を通し屋根は簾朶
をふき土を六尺積たることなれは中々やふれ不申との
ことなり聞しまゝにこゝにしるしおくなり
御老中内藤紀伊守殿には潰所破風ゟ出て坂下御門内なる【「御内」を朱で見消し】
御先手【右に追記】方番所にて着衣借用【右に追記】被致登城のよしに寺社奉行【以上四字右に追記】松平豊
前守斗は家内安否も不聞直に登城尤地震直に
出火にて屋敷不残焼失登城後家内安否家来
申来候よし小石川御門外御勘定奉行御役宅水野筑後守
玄関屋鋪石の間ゟ火を生し候よし尤さあるへき歟
げきとう【以上四字朱で見消し】することなれ火を生すも【朱で見消し】尤なり【二字朱で追記】昼なれは見
留候ものもあるましきに夜のことあかりなとは絶て無
きことなれは玄関前えのかれいてたるものゝ見しよし
なり亦地震と存すると直に数ケ所一同に焼出したる
こと誠に不審なり並之火事のことは立家にてたとへ
ていはゝよき程に真木を立掛けて火を付におなし
潰家は屋根瓦と友に火をおほふことなれは火気