翻刻
【右丁】
かの友たち是を見て。いとあはれと思ひて。夜。の物迄おくりてよめる
年たにも十(とを)とてよつはへにけるをいくたび君をたのみきぬらん
かくいひやりたりければ
これやこのあまのはごろもむべしこそ君がみけし【御衣】と奉りけれ
よろこびにたえでまた
秋やくる露(つゆ)やまがふと思ふまであるはなみだのふるにそ有ける
十七【丸で囲む】年比(としころ)おとづれざりける人の桜(さくら)のさかりに見に来りけれはあるじ
《割書:古今》あたなりと名にこそたてれ桜花 年(とし)にまれなる人も待(まち)けり
かへし
けふこずはあすは雪とぞふりなましきえすは有とも花とみましや
十八【丸で囲む】むかし。なま心ある女有けり。男ちかう有けり。女うたよむ人
なれは。心みんとて。菊(きく)の花のうつろへるを折(おり)て。男のもとへやる
くれなゐにほふはいづら白きくの枝(えた)もとをゝにふるかともみゆ
おとこ。しらずよみによみける
【左丁 挿絵】