東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 1

伊勢物語 - 翻刻

伊勢物語 - ページ 43

ページ: 43

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かへし。れいのをとこ。女にかわりて 《割書:古今》あさみこそ袖はひつらめなみだ川身さへながると聞はたのまん と。いへりければ。男いといたうめでゝ。今までまきて。ふばこに入て。ありと なんいふなる男。ふみをこせたり。えて後(のち)の事成けり。あめのふりぬ べきになん。見わづらひ侍る。身さいわひあらば。此あめはふらしといへり ければ。れいのをとこ。女にかはりて。よみてやらす 《割書:古今》かず〳〵に思ひ思はずとひかたみ身をしる雨(あめ)はふりぞまされる と。よみてやれりければ。みのも。かさも。取あへで。しとゝにぬれてまどひきにけり 百八【丸で囲む】むかし女。人のこゝろをうらみて   風ふけばとばになみこすいわなれやわか衣(ころも)でのかはくときなき と。つねのことくさにいひけるを。聞(きゝ)をひ【注①】ける。おとこ   よひごとに蛙(かわつ)のあま[た]なく田には水こそまされあめはふらねど 百九【丸で囲む】むかし男ともだちの人を。うしなへるがもとにやりける。 【注① 「聞き負ひ」=自分のこととして聞く。】 【左丁】 《割書:古今》花よりも人こそあたに成にけりいづれをさきにこひんとか見し 百十【丸で囲む】むかし男。みそかに【注②】かよふ女有けり。それがもとより。こよひゆめ になん見へ給ひつると。いへりければ。をとこ   思ひあまり出にし玉【魂】の有ならん夜ふかくみへば玉むすび【注③】せよ 百十一【丸で囲む】昔男。やんごとなき女のもとに。なく成にけるを。とふらふやうにて。いひやりける   いにしへは有もやしけん今ぞしるまた見ぬ人をこふるものとは かへし   下ひものしるしとするもとけなくにかたるかごとは恋すそ有べき またかへし 《割書:後選【ママ】》こひしとはさらにもいわじ下紐(したひも)のとけんを人はそれとしらなん 百十二【丸で囲む】むかし男。念比(ねんごろ)にいひちぎりける。女のことざまに【注④】成にければ 《割書:同》すまのあまのしほやくけふり風をいたみ思はぬ方にたな引にけり 百十三【丸で囲む】むかしをとこ。やもめにていて   ながからぬいのちの程(ほと)にわするゝはいかにみしかき心なるらん 【注② ひそかに。】 【注③ 身から浮かれ出た魂を結び止めるまじない。】 【注④ 「ことざまになる」の形で、他の男に心を移した、或は別の男と結婚するの意。】