翻刻
むべなるかな孝行(〳〵)にこられつる身もすん〳〵は
不孝の人にゝけ出(いだ)さるゝ一生(いつしやう)の貧福(ひんぷく)は悉(こと〴〵)
く定(さだま)りありといへども羅綾(らりやう)【美しい衣裳】のたもといつしか
つぎ合(あは)せたるつづれをまとふもあればさ迄
よき位(くらひ)にもあらぬ局(つぼね)見世の流(なが)れのすへに
黒鴨(くろがも)【注】つれたる玉(たま)の輿(こし)に乗(の)るも諺(ことはざ)に云へる
人の行ゑと水(みづ)の流(ながれ)はしれがたきものなり
こゝにある大人(うし)のよみ給へる哥とて吉原
の春の夕 暮(ぐれ)来(き)て見ればはりあひの鐘(かね)
【注 江戸時代、大家出入りの仕事師や職人、あるいは従僕などの称】