翻刻
に花ぞ咲(さき)けるとなむ花の色 香(か)をうばひ
たる道中すがたのたをやかなるは天乙女(あまつおとめ)の
くだれるかとうたがひつん〳〵【とりすまして、あいそのないさま】たるおいらん
中 眼(がん)【目を半分開いていること】にすましてその内に愛敬(あいきやう)こもりたる
さま田舎道者(いなかどうしや)のきもをおびやかすもことはり
なるかな両てんのかんざし【注】禿(かふろ)のおもたげに
ふりかへる姿(すかた)はた右と左りにきらめき渡(わた)る
さまは空(そら)にしられぬ雪(ゆき)の降(ふり)たるやと思ふ
若者が肩(かた)にかゝりて威風(いふう)りん〳〵【凜々】たる鉄(かな)
【両天の簪=江戸末期の婦女の髪飾りの一種。笄(こうがい)の代りに平常用いるもので、二本の棒の端に一対の定紋や造花をつけ、二本の棒を中央で差し込んで用いる】