翻刻
一実植(みうゑ)は丸葉(まるは)のよき桑(くは)の実(み)をとりてあとさきを
つみすて《割書:あとさきのみはきれ|くはとなるゆゑなり》水(みづ)にてよくあらひ真(しん)のたね
ばかりにして灰(はひ)にまぜてはら〳〵となしおき
畑(はた)の土(つち)をよくこまかにして下(した)へしもごえを
よくひきよくほして切(きり)こなし随分(ずいぶん)平(たひら)かになし
その上(うへ)に灰(はひ)にもみまぜし実(み)をずいぶん薄(うす)く
かたまらぬやうにまきおき一夜(いちや)は露(つゆ)をうけよく
朝(てう)蒔(まき)たる上(うへ)に極(ごく)うすくよきこえ土(つち)をうなひて
遣 上(うへ)に米麦(こめむぎ)なとのわらにてもごもくにても日(ひ)
のすくほどにかけおくべしさて芽(め)の出(いで)たるを
見てわらをとりのけ高(たか)さ一尺(いつしやく)ばかりに日(ひ)よけをなして
手(て)すきあらば夕刻(ゆうこく)よりとりのけ朝(あさ)まきかくれはなほ
よろしつよく日(ひ)のあたらぬところは日(ひ)よけにも及ば
ず芽(め)四五寸(しごすん)になるまで手(て)まめにこやしをすべし
翌春(よくはる)別(べつ)にく別(べつ)に桑畑(くはばた)にうつし植(うゑ)土際(つちぎは)より切(きり)て新芽(しんめ)を
出(いだ)すとは前条(まへのくだり)の如(ごと)し細(ほそ)きは今(いま)一年(いちねん)おくれて植(うゑ)
かへ切込(きりこむ)かたよろし肥(こやし)は何(いづ)れも度々(たび〳〵)掛(かく)ることおこた
るべからす
一桑(くは)の仕立(したて)は立木(たちき)根(ね)がりの二色(ふたいろ)なり畑(はた)のもやう
にて五六尺(ごろくしやく)に幹(みき)をたて末(すゑ)をとめおき此(この)ところ