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【右頁】
を以て之(これ)を観(み)るに真痘(しんとう)たる者/一(いつ)もある事なくして皆偽痘(みなぎとう)たり
其偽痘(そのぎとう)も平々(かるき)たる速収痘(ぢがせ)の者/多(おふ)く殊(こと)にしらず彼無識(かのむしき)の医師(いし)
我技量倆(わがしやぎやう)の薄(うす)きを省(かへり)みざる故乎却(ゆへかかへつ)て万世無辺(ばんせいむへん)の良法(よきほう)を損斥(そしる)
のみならず三尺(さんじやく)の童子(こども)も判定(わかり)易(やす)き偽痘(ぎとう)をも弁別(わきま)へず無二(むじ)に
犀角等(さいかくとう)を■(かく)ふるは少(すこ)し恥(はつ)かしからずや殊(こと)に重(おも)き人命(いのち)を済(すく)ふの良法(よきほう)を遮(さへぎ)
りて居多(おふく)の嬰孩(こども)を空(むな)しく死地(しち)に陥(おちい)らしむるの心底実(しんていじつ)に悪(にく)むべきの甚(はなはだ)しき
なり固(もと)より一嬰一児(ひとりのこともひとつのせうに)も天下(てんか)の民人(たみ)たらば何(な)んで如此粗忽(かくのごとくそこつ)にいたせるの理(り)あらんや
加之去(そのうへきん)《割書:メル|》冬以来悪性痘流行(ふゆいらいあしきほうそうりうこう)する事以往(ことこれまで)に十倍(ぢうばい)して其是(そのこれ)に斃(たお)るゝ者も
亦勝(またあげ)て計(かぞ)へ難(がた)し而(しか)して今に流行(りうこう)の止(やま)ざれず余(よ、われ)ば如(ごと)き管見(みじく)の者だも豈徒(あにたゞ、おふして)に
手(て)を束(つが)ねて是を見るに忍(しのび)ん哉此(やこゝ)を以て今其/実事(じつじ)を述(のべ)て是(これ)を衆人(おふぜい)にしらしむ
【左頁】
注意弁(ちういべん、きをつけるわけ)
種痘(ちへぼうそう)を施(ほどこ)すには嬰児(しやうに)の時(とき)をよろしとす殊(こと)に小児生後(しやうにうまれてのち)半年(はんとし)より
一年の間(あいだ)を最(もつと)も妙(みよう)とす又/天然(ほうそう)痘/流行(りうこう)の節(せつ)は益々早(ます〳〵はや)く種(うま)るをよしと
す何(なに)となれば種後(うへてのち)六七日を過(すぐ)れば使令流行痘染(たとひはやりぼうそうすく)とも大都(おふかた)は軽(かる)けれ
ばなり然(しか)るに此時に当(あたり)て種痘(しゆとう)をすれば流行痘(はやりぼうそう)を喚発(よひいだ)すといふ者
あり或(あるい)は我才(わかさい)に稔(ほこ)りて諸件(しよじ)に疑(うたば)ふ人あり或(あるい)は種痘せし者二十
年の後に至(いた)れは更(さら)に又真痘を発(はつ)するといふ者あり或は隣家(となり)に険(あらき)
痘(ほうそう)のあるを見(み)ながら暖和(あたゝくなる)の時節(じせつ)を待(まち)て種(うへ)んといふ人もあり是皆死(これみなし)を
惧(おそ)れて猛虎(はげしきとら)を避(さけ)ざるに似(にた)り豈(あに)し傷(いため)しからずや
有例弁(ゆうれいべん、なかしあるわけ)