翻刻
して痒(かゆ)きを云(いふ)尾張(をはり)三河(みかは)などにて麦(むぎ)の牙(ひげ)の膚(はだ)に
触(さわ)りて痒(かゆ)きをはしかゆいと云(いへ)り《割書:江戸にてイガラツホイ| といふにおなじ》此 病(やまい)
疱瘡(はうさう)と共(とも)に元(もと)瘟疾(うんゑき)《割書:はやり風のおもきをいふすべてねつびやうまた|傷かんともいへどしやうかんは冬の寒気にあた》
《割書:りしよりおこりて|うんゑきとは似てしからず》の類(るい)にて疹疫(しんゑき)とも云(いふ)或(あるひ)は二十年或は
三十年をへだちて流行(りうかう)するに此(これ)を掌(つかさど)る邪神(じやじん)あり疫(えき)
邪と異(ちが)ひ麻疹(はしか)疱瘡(はうさう)は一度 患(やみて)再感(ふたゝびうけ)ず神 気(け)たる事
最著(もつともいちじる)し疱瘡は胎内(たいなひ)より受(うけ)たる血毒(けつき)に因(よ)れば治(おさむ)るに易(たやす)
くもあらねど麻疹は外より受たる神の気 故(ゆへ)其 邪(じや)を
逐(お)ふに難(かた)からざる事 彼(かの)癬疥(ひつしぜん)に類(るい)すべし此(これ)を治(じ)し
誤(あやま)り又 死(し)に至(いた)らしむるは医(い)の拙(つたな)きと病者(びやうしや)の不養生(ふやうじやう)に在(あり)
麻疹(はしか)内攻(ないこう)し発(で)がたき故(ゆへ)に苦脳(くのう)甚(はなはた)しく他病(よのやまひ)さへ引出(ひきいだ)し又(また)
荷痂(かせ)て後(のち)毒忌(どくいみ)を忘(わす)れ再感(さいかん)するもの二件(ふたり)に依(よ)れり再感(ぶりかへし)
は病後(びやうご)身体疲労(しんたいつか)れ血液調化(けつえきちやうくわ)せず気力(きりよく)全(まつた)からぬ地(ところ)なれば
食毒(しよくどく)に誘(ひか)れて邪気(じやき)又入(またい)り或(あるい)は異病(いびやう)と変(へん)じ痼疾(こしつ)とも
なり死(し)せざるも又(また)治(ぢ)するに難(かた)し
・されば此病(このやまひ)に冒(おか)されたらば先(まづ)良医師(よきいし)を招(まね)ぎ速(すみやか)に邪熱(じやねつ)を