翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 104

ページ: 104

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是(これ)善人(ぜんにん)か悪人(あくにん)か。はた敵(てき)か味方(みかた)か。何人(なにびと)といふことをしらず。此(この)者(もの) の姓名(せいめい)をしらんと要(やう)せば。巻(けん)之(の)五の下冊(げさつ)。第(だい)十九 回(くわい)を。読得(よみえ) て知(しる)べし    十三 霊場(れいぢやう)の熱閙(ねつたう) その比(ころ)近江(あふみ)の国(くに)。石山寺(いしやまでら)の観音菩薩(くわんおんぼさつ)。結縁(けちえん)のため開帳(かいちやう)ありけるが。名(な)に おへる霊場(れいぢやう)なれば。これにまうで来(く)る人(ひと)。士女(しぢよ)老少(ろうしやう)群集(くんじう)し。綿々(めん〳〵)絡繹(らくゑき) としてゆきゝしばらくもたえず。誠(まことに)是(これ)行川(ゆくかは)のながれのとゞまらざるに 似(に)たり。商人(あきびと)どもかゝるにぎはひに乗(じやう)じて。過分(くわぶん)の福(さいはひ)を得(え)んと。俄(にはか)に仮(かり) 屋(や)をつくり。草津鞭(くさつむち)。守山鞦(もりやましりかい)。高宮布(たかみやぬの)。長浜糸(ながはまいと)。大津針(おほつはり)。高島硯(たかしますゞり)。武佐(むさ) 墨(ずみ)。水口笠(みなくちかさ)。辻村(つぢむら)の鍋(かなゝべ)のたぐひ。玄恵(げんゑ)法印(ほふいん)が庭(には)の訓(をしへ)にもらせるものまで。おの がさま〴〵持(もち)はこびて。山(やま)のごとくつみあぐれば。買人(かひて)は雲(くも)のごとくにあつまりぬ。 あるひは酒(さけ)売(うる)家(いへ)あり。餅(もち)菓(くだもの)売(うる)軒(のき)あり憩所(いこひところ)をつくりて。茶(ちや)をひさく者(もの) あり。小弓(こゆみ)の射場(ゐば)まうけて。いとなみとする者(もの)あり。あるひは長剣(ちやうけん)を撫(ぶ)して 薬(くすり)をうり。今様(いまやう)をうたひて銭(せに)を乞(こひ)聞(きゝ)もつたへぬ片輪者(かたわもの)。見もおよばぬ 鳥(とり)獣(けもの)など。奇(あやし)とあやしきものを見する所(ところ)幻戯(めくらまし)篭脱(かごぬけ)刀玉(かたなだま)縁竿(くもまひ)のたぐひ 奇妙(きみやう)の術(じゆつ)を施(ほどこ)す所(ところ)など。処(ところ)せきまで立(たち)ならび。笛(ふゑ)吹(ふく)音(おと)鼓(つゞみ)打(うつ)声(こゑ)四方(よも)に ひゞきてかまびすく。諸人(しよにん)の耳目(じもく)をおどろかしむ。此(この)大路(おほぢ)のうちに。薦(こも)すだれ かけかり家(や)つくりて。紙(かみ)もてはれる招牌(まじるし)に。辻談義(つぢだんぎ)露(つゆ)の五郎兵衛尉(ごらうひやうゑのじやう)と墨(すみ) ぐろにかきつけて。戸口(とぐち)にかけたるあり。かれがいふこと聞(きく)とて人(ひと)あまたつどひ 居(ゐ)たり。講師(かうし)たかき床(ゆか)のうへにのぼり。書案(ふづくえ)のうへに柝木(ひやうしぎ)のかたしをおき。まづ しはぶきを前(さき)にたてゝ。聴聞衆(ちやうもんしゆ)にむかひ。夫(それ)つら〳〵阿弥陀経(あみだきやう)を考(かんかう)るに如来(によらい) は五劫(ごこふ)の間(あひだ)思惟(しゆい)し玉ひ。上(かみ)は一人(いちにん)より下(しも)は婆(はゞ)々 嫁(かゝ)々にいたるまで。残(のこり)りなく