翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 105

ページ: 105

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すくひとらめとの御誓願(ごせいぐわん)は。おの〳〵や我等(われら)まで。ありがたくたふとき事に あらずや。かるがゆゑに弥陀如来(みだによらい)は。寝(ね)玉ふことはさておきてあぐみ居玉ふ ことだになく。十万 里(り)かなたの西方(さいほう)より。こなたの方(かた)に伸(のび)あがり玉ひて。衆生(しゆじやう) の地獄(ちごく)をつくるを見玉ひては。あなや〳〵とかなしみおぼさるゝよし。それよりは 持国(ぢこく)多聞(たもん)などいへる一騎当千(いつきとうせん)の四天王(してんわう)に命(めい)ぜられ衆生(しゆじやう)胸裏(きうり)の地獄(ぢごく)を つぶす御分別(こふんべつ)はなきかと。声(こゑ)おかしううちあげていひつゝ。かの柝木(ひやうしぎ)をとりて 書案(ふづくえ)を撲地(はたと)打(うち)ならしければ芝居(しばゐ)一 度(ど)に鳴動(めいどう)し且(かつ)笑(わらひ)且(かつ)感(かんず)る声(こゑ)しば らくはやまざりけり。そのとなりもおなじすぢなる小 屋(や)つくりて。外(と)の方(かた)に うつくしき少女(しやうぢよ)の身(み)うちに蛇(くちばみ)のまとひつきたるさまを絵(ゑ)にかきたる。招(ま) 牌(しるし)をかゝげいだしたるあり。かたぬぎたる男(おとこ)戸口(とぐち)に立(たち)扇(あふぎ)をひらきて往来(ゆきゝ)の 人(ひと)をさしまねきつゝ。声(こゑ)たかやかによばひいへるは。これ此(この)まじるしを見玉へ。そも 此(この)女子(をなご)こそ。丹波(たんば)の国(くに)なる奥山(おくやま)に住(すむ)猟師(かりうど)の子(こ)なれ。殺生(せつしやう)の罪科(つみとが)親(おや)の 因果(いんぐわ)の子(こ)にむくひはべりてかく蛇(くちばみ)に見こまれ身(み)うちにまつはりてはなれさらず。 容(かたち)は世(よ)にすぐれてうつくしう生(うま)れつきながら。人(ひと)がましき交(まじは)りならぬ身(み)とはなり にたり。十(とを)か一ツ罪障(ざいしやう)消滅(せうめつ)の便(よすが)ともなれかしとて。あまねく人々に見せ奉(たてまつ)る也。 都(みやこ)におきては四条(しじやう)の川原(かはら)。浪華津(なにはづ)にては道頓堀(だうとんぼり)。伊勢(いせ)の国(くに)にゐてゆきては。白子(しろこ) なる観音堂(くわんおんどう)のほとりにて見せ奉りぬ。ものゝむくいのおそろしさはかくぞあなる。前(ぜん) 代未聞(だいみもん)又たぐひあらじ。いへづとによき話柄(はなしのたね)ぞ招牌(まじるし)につゆばかりもいつはりあらば銭(ぜに) とり候まじ見玉ひてのちおこし玉へと。声(こゑ)かるゝばかりのゝしれば。見物(けんぶつ)の諸人(しよにん) 蟻(あり)のごとくに集(つどひ)蜂(はち)のごとくに群(むらが)りて。かりやのうちにいり。こちおしあちおし。 ひしめきあひてこれを見る。此(この)をなごはすなはちこれ。六字(ろくじ)南無(なむ) 右衛門が娘(むすめ)楓(かへで)なり。憐(あはれ)むべし楓(かへで)は。こゝろにもあらで。眉(まゆ)をゑがき脣(くちびる)を