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昔話(むかしかたり)稲妻(いなつま)表紙(ひようし)巻之五上冊
江戸 山東京伝
十五 孤雁(こがん)の禍福(くわふく)
当時(そのとき)。なむ右衛門又平 等(ら)一同(いちどう)に。かの金(かね)の出所(しゆつしよ)いかゞと。いぶかり思ひける所(ところ)に。
一人の男(おとこ)。汗(あせ)もしとゝに息(いき)もつきあへず。飛(とぶ)がごとくにはせ来(きた)り。案内(あんない)も
こはず内(うち)にいり。たしかに爰(こゝ)におちたるがといひつゝ。あたりを見まはし。
なむ右衛門が手(て)に持(もち)たる財布(さいふ)を見つけ。そは我(わが)失(うしな)ふたる金(かね)なり。
此方(このほう)へかへすべしといひつゝ。財布(さいふ)に手(て)をかくるを。なむ右衛門かへり見て。汝(なんぢ)
は長谷部雲六(はせべのうんろく)ならずやといへば。此(この)男(をとこ)仰天(ぎやうてん)しよく〳〵見れば。佐々良(さゝら)三
八郎にて。かしこに若殿(わかとの)桂(かつら)之助もおはしければ。ます〳〵驚(おどろき)。財布(さいふ)も
とらで逃(にげ)いだすを。なむ右衛門 猿臂(ゑんひ)を伸(のべ)。ゑりくびつかみてひき