翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 65

ページ: 65

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明月(めいげつ)皎々(けう〳〵)とかゝやき出(いで)。木(こ)の間(ま)をもりて光(ひか)りあきらかなりければ。鹿蔵(しかぞう) 五人の顔(かほ)を見(み)るに。伴(ばん)左衛門をはじめ四人の者(もの)。皆(みな)見(み)しりたるもの どもなり。五人の者(もの)も鹿蔵(しかぞう)は。かねて見(み)しりの下部(しもべ)なれば。生(いけ)おきては後日(ごにち) のさまたげなりと。一同(いちどう)にとりまきて。きつさき揃(そろへて)て切(きり)つくる。勢(いきほひ)猛(たけき)鹿蔵(しかぞう)も。 双拳(そうけん)四手(ししゆ)に敵(てき)しがたく。ほど〳〵危(あやう)く見へたる所(ところ)に。三郎左衛門が乗(じやう) 馬(め)。一声(ひとこゑ)いばえて荒出(あれいだ)し。五人の者(もの)を踏(ふみ)たふし踢(け)たふしければ。 五人の者(もの)は大に狼狽(うろたへ)。はたらきかねてぞ見へたりける。鹿蔵(しかぞう)大わらはに なり。命(いのち)を限(かぎ)りに刀(かたな)をまはし。四面(しめん)八方(はつほう)をきりたつる。五人の者(もの)一方(いつほう)は荒馬(あらうま)に 踢(け)ちらされ。一方(いつほう)は鹿蔵(しかぞう)が死物狂(しにものぐるひ)にきりたてられ。ついに敵(てき)することあた はず。いちあし出(いだ)して逃(にげ)いだせば。鹿蔵(しかぞう)主人(しゆじん)の敵(かたき)のがさじやらじとよばゝりつゝ。 葦駄天走(いだてんばし)りに追行(おひゆき)けり。かゝる折(をり)しもむかふの方(かた)より。黒星(くろぼし)眼平(がんへい)。四五十 人(にん)の荒男(あらしほ)どもを引具(ひきく)し。高挑灯(たかちやうちん)を前(まへ)にたてゝ。行列(ぎやうれつ)をつらね。あたりを 払(はら)ひて足(あし)ばやにすゝみ来(く)る。鹿(しか)蔵これを屹(きつ)と見(み)て。正(まさしく)是(これ)上館(かみやかた)の打手(うつて) ならん。立帰(たちかへ)りて註進(ちうしん)すべきか。彼等(かれら)を追(おひ)て仇(あた)を報(むくは)んかと。心(こゝろ)は二ツ 身(み)しばらく猶予くださるべしといはせも果ずいな〱厳命なれば片時もは一ツ。ゆきては思案(しあん)し。もどりては躊躇(ちうちよ)し。おなじ所(ところ)をいく度(たび)か。ゆきつ もどりつひまどりぬ。黒星(くろぼし)眼平(がんへい)は時刻(じこく)をうつさず。平群(へぐり)の下館(しもやかた)にはせむかひ。 これは大殿(おほとの)の厳命(げんめい)をかうふり。銀杏前(いてふのまへ)どの月若(つきわか)どの。親子(しんし)の御首(おんくび)を たまわらん為(ため)むかふたり。名古屋(なごや)父子(ふし)はいづくにあるぞ。はやく御二方(おんふたかた)をわたす べしと。声(こゑ)たからかによばゝりければ。すは一大事(いちたいじ)と第中(ていちう)大に騒動(そうたう)し。名古屋(なごや) 山(さん)三郎 走出(はしりいで)。其(その)儀(ぎ)先刻(せんこく)当館(とうやかた)に告(つぐ)る者(もの)あるにより。父(ちゝ)三郎左衛門 御助命(ごぢよめい)を願(ねが)んため。先刻(せんこく)上館(かみやかた)へまかり越(こ)し候へば。父(ちゝ)が帰(かへ)り候まで。 しばらく猶予(ゆうよ)くださるべしといはせも果(はて)ず。いな〳〵厳命(げんめい)なれば片時(へんし)も