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昔話(むかしがたり)稲妻(いなつま)表紙(びやうし)巻之四
江戸 山東京伝編
十二 修羅(しゆら)の大鼓(たいこ)
さても銀杏(いてふ)の前(まへ)は。山三郎に扶(たすけ)られて。生駒山(いこまやま)の麓(ふもと)までおちのびしが。
辻堂(つぢどう)にて追手(おひて)の者(もの)に捕(とら)へられ。不破(ふは)道犬(だうけん)が手(て)にわたりて。蜘手方(くもでのかた)の
深殿(しんでん)。おくまりたる一間(ひとま)のうちに押篭(おしこめ)られて。日(ひ)のかげだに見ること
あたはず。月若(つきわか)の身(み)のうへ苦(く)になるうへに。朝夕(あさゆふ)の食事(しよくじ)だに。ろく〳〵に
与(あた)へざれば。心気(しんき)日々(ひゞ)におとろへ。身体(しんたい)夜々(やゝ)にやせほそりて。命(いのち)も危(あやう)く
見え玉ふ。しかのみならず。道犬(だうけん)蜘手方(くもでのかた)と密談(みつだん)して。大殿(おほとの)判官(はんぐわん)の
命(めい)といつはり。いてふの前(まへ)を引(ひき)いだして。両人(りやうにん)かはる〴〵。昼夜(ちうや)たえまなく
寤現責(うつゝぜめ)にして。月若(つきわか)のゆくへ白状(はくじやう)せよと責(せめ)にけり。むざんやないてふの