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【右】
此(こ)の講義(かうぎ)は實(じつ)公衆(ひと〴〵)の衛生(ゑいせい)に肝要(かんえう)なる事(こと)なれば講場(かうじやう)に
て留(と)め置(お)きたる筆記(ひつき)を刊(す)り出(いだ)して世(よ)に公(おほ)やけにせんと
は思(おも)へどその筆記(ひつき)はたとへば日報(につぽう)または報知(はうち)の大新聞(おほしんぶん)
を残(のこ)らずよく分(わか)るほどに讀(よ)み得(う)るものには分(わか)りもすべ
けれど讀賣(よみうえい)または繪画(ゑいり)の新聞(しんぶん)を讀(よ)むがごいとく誰(たれ)にも分(わか)
るにはあらぬなり因(よ)りて余(よ)は不圖老婆心(ほとせわぎ)を起(おこ)して前(まへ)の
講義(かうぎ)の主意(しゆい)に基(もと)づき発疹窒扶斯(はつしんちふす)を豫防(ふせ)ぐに心得(こゝろえ)となる
べき事(こと)を採(と)り集(あつ)め女子幼童(をんなこども)にも讀(ようま)るゝまで易(やす)く書(か)きし
るして此(こ)の発疹窒扶斯(はつしんちふす)豫防(ふせぎかた)の訓(をしえ)といふ一の小(ちひ)さき冊子(さうし)
を作(つく)り出(いだ)しぬ然(さ)れど訓(をしえ)といひ殊(こと)に公衆(ひと〴〵)の衛生(ゑいせい)に肝要(かんえう)な
る方法(しかた)を説明(と)けるものなれば自分(じぶん)のみにて善(よ)しと定(さだ)めず
三宅先生(みやけせんせい)の一閲(けみし)を請(こ)ひ受(う)けて後(のち)いよ〳〵版(はん)に上(のぼ)せ公衆(ひと〴〵)
【左】
に示(しめ)すことゝはしたり公衆(ひと〴〵)若(も)しこの冊子(さうし)によりて発疹窒(はつしんち)
扶私(ふす)の豫防法(ふせぎかた)をq知(し)ることあらば余(よ)の老婆心(せわぎ)も亦(また)空(あだ)とな
らざるべし
発疹窒扶私(はつしんちふす)といふ病(やまひ)は西洋(せいいやう)には昔(むかし)よりありて度々(たび〳〵)大流行(おほばやり)
すれど日本(につほん)にあるは近頃(ちかごろ)の事(こと)にて前(まへ)かたにはこの病(やまひ)なか
りしといへどおと〳〵この病(やまひ)は疫病(やくびやう)といひ來(きた)りしものゝ
中(うち)の一種(いつしゆ)なれば昔(むかし)よりの史書(ほん)や年代記(ねんだいき)に随分(ずゐぶん)たび〳〵疫(えき)
癘(れい)の大流行(おほばやり)せしことを書(か)き載(の)せてあるはその中(うち)に此(こ)の發(はつ)
疹窒扶私(しんちふす)ありしかも知(し)れぬと考(かんが)へらる偖(さて)今年(ことし)は我國(わがくに)に此(こ)
の病(やまひ)流行(はやり)るの兆(きざし)ありて已(すで)に東京(とうきやう)や横濱(よこはま)にてはこれを煩(わつら)ふ
もの數多(あまた)あれば何時(いつ)俄(にはか)に大流行(おほばやり)となりて世間(せけん)の人々(ひと〴〵)が格(こ)
列刺(れら)よりも甚(はなは)だしく悩(なや)まさるゝかも知(し)れぬなり然(さ)ればわ