翻刻
【右】
べし而(さう)して発疹窒扶私(はつしんちふす)の病人(びやうにん)ある土地(とち)の近傍(ちかみ)へは勿論(もちろん)祭(さい)
禮(れい)、劇場(しばゐ)、寄席(よせ)、講釈場(かうしやくば)観場(みせもの)などのやうな人の多(おほ)く集(あつ)まる處(ところ)へ
は往(ゆ)かぬ様(やう)にし又(また)不潔(きたな)き旅店(はたごや)には宿(とま)らず不潔(きたな)き人力車(じんりきしや)、馬(ば)
車(しや)には乗(の)らぬを善(よ)しとす又(また)乗合船(のりあひぶね)に乗(の)るにはよく意(き)を注(つ)
くべし〇此(こ)の病(やまひ)の傳染(うつ)るを防(ふせ)ぐに學校(がくかう)、制作處(せいさくしよ)をはじめ下(げ)
宿屋(しくや)、旅籠屋(はたごや)、貸座鋪(かしざしき)、馬車屋(ばしやや)、乗合船(のりあひぶね)の宿(やど)、古衣商(ふるぎや)、質舖(しちや)、夜具(やぐ)蚊幮(かや)
衣服(きもの)の損料貸(そんれうかし)、洗濯職(せんたくや)などにては取(と)り分(わ)け意(き)を注(つ)くべきな
り〇餘義(よぎ)なく発疹窒扶私(はつしんちふす)の病人(びやうにん)に立(た)ちよるか病毒(びやうどく)の著(つ)き
たる衣服(きもの)や器具(だうぐ)に近(ちか)づきし時(とき)は石鹸(しやぼん)または醋(す)を和(ま)ぜたる
水[小盥(こだらい)一杯(いつはい)の水(みづ)に醋(す)五勺許(ごしやくほど)]にてよく顔(かほ)や手足(てあし)を洗(あら)ふべし
その外(ほか)病人(びやうにん)のある家(いへ)に往來(ゆきゝ)し又(また)は病毒(びやうどく)を含(ふく)むかと疑(うたが)ふ物(もの)
に觸(さは)りし時(とき)も然(さう)するを良(よ)しとす〇精々(せい〴〵)豫防法(ふせぎかた)に心(こゝろ)を用(もち)ひ
【左】
て居(ゐ)ても若(も)し発疹窒扶私(はつしんちふす)かと思(おも)ふ病人(びやうにん)出來(でき)たる時(とき)は別(べつ)の
一室(ひとま)[一室限(ひとまぎ)りなき家(いへ)ならば一隅(かたすみ)]に臥(ね)させsて先(ま)づ家内(かない)のも
のもなるたけ側近(そばちか)くよらぬ様(やう)にし早速(さつそく)にその診別(みわけ)のつく
程(ほど)の醫師(いしや)を召(よ)びて診(み)て貰(もら)ひいよ〳〵発疹窒扶私(はつしんちふす)であるな
らばその筋(すぢ)への届方(とゞけかた)は醫師(いしや)に任(まか)せて指圖(さしづ)を受(う)くべし偖(さて)こ
の病(やまひ)は烈(はげ)しき傅染病(うつりやまひ)にて側(そば)へ近(ちか)よる者(もの)にはたちまち感染(うつ)
りて一家内(ひつかない)のものが一時(いちじ)に枕(まくら)を並(なら)べて臥(ね)る様(やう)な事(こと)が出來(でき)
病人(びやうにん)に肝腎(かんじん)なる手當看病(てあてかんびやう)が届(とゞ)かぬのみならず病毒(びやうどく)も自然(しぜん)
蔓延(はびこ)り易(やす)ければなるたけ早(はや)く此等(これら)の傅染病(うつりやまひ)を療治(れうぢ)する病(びやう)
院(ゐん)に入(はい)る様(やう)にするがよし然(さう)すればその病院(びやうゐん)には醫師(いしや)も詰(つ)
め切(き)つて居看病人(ゐかんびやうにん)も澤山(たくさん)ありて手當(てあて)も厚(あつ)く届(とゞ)けばなまじ
ひに自宅(うち)で療治(れうぢ)するよりも當人(たうにん)の為(ため)になり又(また)家内(かない)のもの