翻刻
【右】
の為(ため)にもなるなり然(さ)れど若(も)し據(よん)どころなく自宅(うち)で療治(れうぢ)す
る時(とき)は先(ま)づ老人(としより)や小兒(こども)あらば當分(たうぶん)餘所(よそ)へ避(よ)けさせ家内(かない)の
中(うち)にて誰(だれ)ぞ然(しか)るべきものを一人(ひとり)極(き)めて看病人(かんびやうにん)としその看(かん)
病人(びやうにん)は時々(とき〴〵)衣服(きもの)に石炭酸水(せきたんさんすゐ)をふり掛(か)け石鹸(しやぼん)にて顔面手足(かほてあし)
を洗(あら)ふべし又(また)病人(びやうにん)の室(へや)の内(うち)にある物(もの)は一切(いつせつ)これを外(そと)へ出(だ)
して使(つか)ふべからず〇病人(びやうにん)が治療(なほ)りたりとて浴(ゆ)を使(つか)ひ石鹸(しやぼん)
にてよく全身(からだ)を洗(あら)ひ衣服(きもの)を取(と)り換(か)へぬ中(うち)はそれと一所(いつしよ)に
なるべからずその使(つか)ひし衣服(きもの)、衾褥(やぐ)、蚊幮(かや)は焼(や)き棄(す)てるか又(また)
は石炭酸水(せきたんさんすゐ)に一晝夜(いつちうや)の間(あひだ)漬(つ)け置(お)きてその上(うへ)に沸湯(にえゆ)を注(か)け
それよりよく洗(あら)ひ日光(ひ)に曝(ほ)すべし洗濯(せんたく)の出來(でき)ぬ品(しな)は亞硫(ありう)
酸瓦斯(さんくわす)で熏(いぶ)しまたは石炭酸蒸気(せきたんさんじようき)にあてゝ後(のち)日光(ひ)に曝(ほ)すべ
し病人(びやうにん)の居(を)りし室(へや)は畳蓆(たゝみござ)の類(るゐ)を揚(あ)げて柱(はしら)か壁(かべ)に倚(よ)せかけ
【左】
戸棚(とだな)を開(あ)け放(はな)ち室(へや)の中(うち)にある器具類(だうぐるゐ)は残(のこ)らず列(なら)べ置(お)き戸(と)
口(ぐち)や窓(まど)を閉(し)めて六/時間(じかん)の上(うへ)亞硫酸瓦斯(ありうさんくわす)で熏(いぶ)すべしそれよ
り障子(しやうじ)、柱(はしら)、牀板(ゆかいた)を石炭酸水(せきたんさんすゐ)にて拭(のご)ひ器具類(たうぐるゐ)は石鹸(しやぼん)を解(と)きた
る水(みづ)または沸湯(にえゆ)にて洗(あら)ひ取(と)り出(だ)して風(かぜ)や日光(ひ)に中(あ)つべし
〇不幸(ふかう)にして病人(びやうにん)の死(し)にたる時(とき)には単衣(ひとへもの)か木綿(もめん)を石炭酸(せきたんさん)
水(すゐ)に浸(ひた)しこれにてその屍體(かばね)を包(つゝ)み速(はや)く棺(くわん)に歛(おさ)むべし而(さう)し
火葬(くわさう)するを良(よ)しとすその屍體(かばね)を置(お)きたる室(へや)はすべて前(まへ)
の如(ごと)く消毒法(どくけし)を行(おこな)ふべし
消毒法(どくけし)に使(つか)ふ藥劑
〇石炭酸水(せきたんさんすゐ) 石炭酸(せきたんさん)二/匁(もんめ)を虞里設林(ぐりせりん)または亞薾箇保兒(あるこほる)
四匁(もんめ)にてよく溶解(とか)しそれを二合餘(がふあまり)の水(みづ)に混(ま)ぜる
〇石炭酸蒸気(せきたんさんじやうき) 二倍(ばい)の亞的兒(あゝてる)を和(ま)ぜたる石炭酸(せきたんさん)を皿(さら)に