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にいたる。時頼(ときより)其時世(そのじせい)を考(かんが)へ。翌年(よくねん)の春(はる)。重経(しげつね)春常(はるつね)主従(しうじゆ)を。鎌倉(かまくら)へ召(めさ)
れ。貴殿(きでん)自(みづから)犯(おか)せし罪(つみ)ならねども。春常(はるつね)が麁忽(そこつ)によつて。国郡(くにこふり)の領地(れうち)を召(めし)
上(あげ)られ。わづかの采地(さいち)に蟄居(ちつきよ)させらるれども君命(くんめい)戻(もと)る事(こと)なふして。慎(つゝしん)て身(み)を
守(まも)らる。これに仍(よつ)て在府(ざいふ)在国(さいこく)の諸侯(しよこう)。管領(くはんれい)地頭(ぢとう)にいたる迄。君(きみ)を重(おもん)じ家人(けにん)
を戒(いまし)め。自(おのづ)から尊卑(そんひ)を分(わか)つて。無礼(ぶれい)非義(ひぎ)の動静(ふるまひ)なく。是(これ)全(まつた)く足下(そつか)君命(くんめい)を
守(まも)らるゝが故(ゆゑ)にして。暗(あん)に天下国家(てんかこくか)を治(おさむ)る一助(いちじよ)となる。将軍(せうぐん)御満足(ごまんぞく)し給ひ。則(すなはち)
御褒称(ごはうしやう)として。今(いま)下(くだ)し置(おか)れたる采地(さいち)の上(うへ)に。丹後(たんご)の国(くに)なる旧領(きうれう)。元(もと)の如(ごと)く下(くだ)し
賜(たまは)る。又/藤太春常(とうだはるつね)も。主命(しうめい)を重(おもん)するが故(ゆゑ)。彦五郎(ひこごらう)が旧悪(きうあく)を憎(にく)む。これまた
忠心(ちうしん)の一端(いつたん)ならんか。よつて遠流(をんる)を許(ゆるし)し。元(もと)の如(ごと)く重経(しげつね)に復(かへ)さるゝと演(のべ)らるれば
主従(しうじゆ)面目(めんぼく)を施(こどこ)【「ほどこ」ヵ】し。君恩(くんおん)とは雖(いへども)も是(これ)皆(みな)執権(しつけん)が慈恵(じけい)なりと。深(ふか)く時頼が
厚情(かうじやう)を謝(じや)し。速(すみやか)に本領(ほんれう)に帰城(きじやう)せしかば。諏訪入道(すはにうだう)。兼(かね)て執権(しつけん)が内意(ないゐ)を得(え)た
るにや。家財(かざい)調度(てうど)雑物(さつぶつ)にいたる迄。悉(こと〴〵く)倉庫(くら)に納(おさ)め封印(ふういん)と【「と」は、もヵしヵ】。木石(ほくせき)一ツも動(うご)かす