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なす事(こと)を得(え)んやと。両国(れうごく)の主(あるじ)交争(たがひにあらそひ)の慾念(よくねん)をたち。忽(たちまち)馬(うま)の頭(かしら)を返(かへ)し。
自国(じこく)々々(〳〵)に立(たち)かへり。争(あらさ)ふ所(ところ)の田地(でんち)を譲(ゆづ)らんとすれども。又(また)互(たがひ)に辞(じ)して納(をさ)め
ず。両国(れうこく)の領民(れうみん)心(こゝろ)を一(ひとつ)にし。これを間田(かんてん)と号(がう)して作(つく)り。これが米粟(べいぞく)二(ふた)ツ(つ)に
分(わか)ち。半(なかば)づゝを領民(れうみん)より。両国(れうこく)の君(きみ)に奉(たてまつ)れり。此(この)始末(しまつ)追々(おひ〳〵)天下(てんか)に聞(きこ)え。諸侯(しよこう)
互(たがひ)に争戦(さうせん)して。犯奪(おかしうば)ふ処(ところ)の地(ち)を返(かへ)し。親(したしみ)を結(むす)ぶ事四十/余国(よこく)に及(およ)ぶとかや。
これ文王(ふんわう)の聖徳(せいとく)。万国(ばんこく)に充満(じうまん)し。其(その)化(くは)にしたがふ処(ところ)也。誠(まこと)なる哉(かな)。上(かみ)一人(いちにん)の心(こゝろ)は
則(すなはち)万人(ばんにん)の心(こゝろ)。源(みなもと)清(きよ)ふして下流(かりう)濁(にご)らず。時頼/多年(たねん)邪(じや)を防(ふせ)ぎ。道(みち)を進(すゝ)む事(こと)
色(いろ)を好(この)むがごとくし。悪(あく)をにくみ不潔(いさぎよからぬ)を去(さ)り。人欲(じんよく)の私(わたくし)を亡(ほろほ)し。明徳(めいとく)至善(しせん)に
止(とゞま)るがゆゑ。かゝる田夫野人(でんぶやじん)も。其(その)人欲(しんよく)を去(さつ)て。正道(せうだう)を守(まも)るは。全(まつた)く時頼(ときより)の
政徳(せいとく)の余沢(よたく)なりと感激(かんげき)せざるは無(なか)りけり
松下禅尼質素解義景話(まつしたがぜんにしつそよしかげをとくこと)
秋田城介義景(あきたじやうのすけよしかげ)といへるは。幼年(やうねん)より時頼(ときより)とは竹馬(ちくば)の友(とも)にして。互(たがひ)に生(ひ)