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多(おほ)きに。野心(やしん)の噂(うはさ)種々(とり〳〵)なる三浦(みうら)が館(やかた)に引/籠(うつ)るは。これ心ある深計(しんけい)にて
一(ひとつ)には人民(じんみん)の疑心(ぎしん)を解(と)き。二(ふたつ)には泰村(やすむら)の心を和(なご)【「なご」は「なだ」ヵ】め。三には動静(ようす)をも探(さぐらん)ため也
然(しか)るに同十七日。三浦が一族(いちぞく)忍(しの)び〳〵に。泰村(やすむら)が館(やかた)に集会(しうくはい)し。奥(おく)まりたる
室(しつ)に籠(こも)り。額(ひたひ)を合(あわ)せ密話(みつわ)なし。夜(よ)に入て具足(ぐそく)を運(はこ)び。弓箭(ゆみや)を取扱(とりあつかひ)
馬(うま)に鞍(くら)さへ置(おか)する容(さま)。時頼(ときより)密(ひそか)にこれを見て。嗚呼(あゝ)悲哉(かなしひかな)天(てん)三浦(みうら)か家
を亡(ほろぼ)し給へり。已(やみ)なん〳〵と嘆(たん)じつゝ。近臣(きんしん)五郎四郎/只(たゞ)一人を召連(めしつれ)。太刀(たち)のみを持(もた)せ
密(ひそか)に三浦亭(みうらのてい)の後門(うしろもん)を忍(しの)び出。北条亭(ほうてうてい)に帰(かへ)らせ給ひ。直(たゞち)に近江(あふみ)四郎左衛門
氏信(うしのぶ)といふ。剛(かう)の者(もの)に機密(きみつ)を告(つげ)て。三浦(みうら)がもとへ使(つかは)し給ふ。偖(さて)も泰村(やすむら)は。今度(このたひ)
料(はか)らずも時頼(ときより)着服(ちやくふく)にて。我館(わがたち)に来る事(こと)。天/我(われ)をして北条(ほうでう)を討(うた)しめ内謀(ないぼう)
成就(しよじゆ)なさしめ給ふと。己(おのれ)が邪曲(じやきよく)に理(り)を附(ふ)して。倉卒(にはか)に徒党(ととう)の一類(いちるい)を集(あつ)
め。今宵(こよひ)密(ひそか)に。時頼(ときより)が寝首(ねくび)を掻(か)き。明暁(めうあさ)旌籏(せいき)を天に翻(ひるがへ)し。北条氏族(ほうてうしぞく)を
討(うつ)て。枝葉(しよう)を枯(から)し。一時(いちぢ)にことを計(はか)らんと。夫々(それ〳〵)へ向(むか)ふ討(うつ)手を分(わか)ち。其(その)役備(ようい)全(まつたく)