← 前のページ
ページ 147 / 491
次のページ →
翻刻
遅参(ちさん)を詫(わぶ)る。軍(いくさ)散(さん)じてのち。盛時(もりとき)か奇代(きたい)の振舞(ふるまひ)。時頼(ときより)聞(きゝ)て甚(はなはだ)感(かん)じ
諏訪入道(すはにうだう)をもつて。卯花威(うのはなおどし)の鎧(よろひ)一領(いちれう)給りけり
時頼仁慈(ときよりのしんじ)伏(ふくする)泰村(やすむき)【「やすむき」は「やすむら」ヵ】話(こと)
去程(さるほど)に三浦泰村(みうらやすむら)は。近江氏信(あふみうぢのぶ)を詭(いつは)り。無異(ぶゐ)の返答(へんたう)をなすといへども。
さらに止(とゞ)まるべき心(こゝろ)あらず北条(ほうでう)に心(こゝろ)を緩(ゆる)させ。不意(ふい)に明暁(めうきやう)押寄(おしよせ)て。
一挙(いつきよ)に事(こと)を計(はか)らんと。態(わざ)と其夜(そのよ)は鎮返(しづまりかへ)り。夜明(よあけ)遅遅(おそ)しと待居(まちゐ)るに。やがて
鶏鳴(けいめい)も近付(ちかづく)らんと思(おも)ふ処(ところ)に。家(いへ)の子(こ)藤次宗近(とうじむねちか)といふもの。遽敷(あはたゝしく)泰村(やすむら)に
向(むか)ひ。君(きみ)未知哉(しらずや)。某(それがし)たゞ今(いま)物見(ものみ)より。時刻(じこく)をはかりつる処(ところ)。夕辺(ゆふべ)は有(あり)とも存(そんぜ)ぬに。
北条亭(ほzうてうてい)の四面(しめん)大路(おほぢ)小路(こうじ)。家々(いへ〳〵の)旌籏(はた)朝風(あさかぜ)に飜(ひるがへ)り。軍兵(くんべう)にあらざる処(ところ)なし。
ひそかに斥僕(ものみ)遣(つかはし)候えは。猶(なほ)も弐百/騎(き)三百/騎(き)打つれ〳〵。北条(ほうでう)守護(しゆ?ご)と馳付容(はせつくさま)。
味方(みかた)与力(よりき)の人々(ひと〳〵)も。敵(てき)の大軍(たいぐん)に憶(おく)しけん。俄(にはか)に勢(せい)を引(ひい)て帰(かへ)るあれば。変心(へんしん)
して北条氏(ほうてううち)へ向(むか)ふもありて。夕部(ゆふべ)まで充満(じうまん)したる兵卒(へいそつ)も。残(のこ)り少(ずく)なに相成(あいなり)