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せり。兄(あに)泰村(やすむら)これを聞(きゝ)て。悲歎(ひたん)数刻(すこく)におよびしが。先(まつ)両女(ふたり)が死骸(なきから)を
門内(もんない)に舁入(かきいれ)させ。人(ひと)を馳(はせ)て正治(まさはる)に告(つ)ぐ。正治(まさはる)いかで驚(おとろ)かざらん。我心(わがこゝろ)
を易(やす)からしめんと。百年(ひやくねん)の寿(ことふき)を。縮(ちゞめ)る事(こと)こそ不便(ふびん)なれ。されどもわれ
に不/義(ぎ)の名(な)を。受(うけ)させじとの貞心(ていしん)いかで空(むな)しく為(なす)べきと。直(たゞち)に設備(やうい)の
手勢(てせい)を引具(ひきぐ)し。先(まつ)北条亭(ほうでうてい)にいたり。此(この)趣旨(おもむき)をのべ。将軍(しやうぐん)の御所(ごしよ)を警(けい)
衛(ゑい)せり。此(この)動乱(とうらん)鎮(しづまつ)【しづまりヵ】てのち。時頼/此(この)両女(ふたり)が貞忠(ていちう)を称嘆(しやうたん)して。厳重(げんちう)
の仏事(ぶつじ)を修(しゆ)せしめ給ひしとかや。三浦(みうら)が館(たち)へ。関政泰(せきまさやす)か取(とつ)て返(かへ)し。門(もん)
戸(こ)を固(かた)めしより。又/北条亭(ほうでうてい)へも軍勢(ぐんぜい)到着(とうちやく)し。既(すで)に矛盾(むじゆん)の色(いろ)見へければ。
時頼大に嘆(たん)じ給ひ。右馬入道浄意(うまのにうだうじやうい)。左衛門入道/盛阿(せいあ)。両人(れうにん)をもつて
泰村(やすむら)に申/遣(つか)はさるゝは。漸(やう〳〵)世上(せじやう)穏(おたやか)なるを以(も)て。時頼(ときより)歓喜(よろこび)に堪(たへ)ざる処(ところ)。
あらぬ巷(ちまた)の雑説(ざうせつ)に迷(まよ)ひ。又も門戸(もんこ)を固(かた)めらるゝは。近頃(ちかごろ)卒忽(そこつ)のいたり
ならんか。君子(くんし)一言(いちげん)を重(おも)んずと。我(われ)に君子(くんし)の徳(とく)なしといへども。信義(しんぎ)に