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柄家(おかみ)の虎威(ごいくはう)を借(か)り奉(たてまつ)りて。無難(ぶなん)に太刀(たち)を取戻(とりもど)さんと。御館(みたち)へ推(すい)
参(さん)候/処(ところ)に。当社(とうしや)へ御参詣(ごさんけい)と承(うけたまは)り。あまりに捷経(こゝろいそぎ)【捷径ヵ】憚(はゞかり)をも顧(かへりみ)す。道路(とうろ)に
訴訟(そせう)し奉(たてまつ)る。哀(あは)れ御仁恵(ごしんけい)を以(もつ)て。右(みき)大蔵(だいざう)を糺問(きつもん)なし給ひ。彼(かの)太刀(たち)戻(もと)
し侯やう。仰付(おほせつけ)られ候はゞ難有(ありがた)からんと述(のべ)ければ。時頼(ときより)逐一(ちくいつ)聞(きこ)し召(めし)いかゞ
思(おぼ)しけん。些(すこ)し疑惑(ぎわく)の容(かたち)にて。小童(こわつは)が面(おもて)を屹(きつ)と見給ひしが又/何(なに)か自(じ)
得(とく)なし給ひけん面(おもて)を和(やわ)らげ。汝(なんぢ)いまだ総角(あげまき)の身(み)として遠(とを)き但州(くに)より遥々(はる〴〵)と
来(く)る志(こゝろざし)神妙(しんべう)也。まづ当国(とうごく)に其者(そのもの)の有無(うむ)を糺(たゞ)して居(お)るならば。対決(たいけつ)
申付べしと直(たゞち)に馬廻(うままは)りの壮士(さふらひ)に命(めい)じ。鶴岡(つるがおか)の庄官等(せうやら)に触(ふれ)しめ其者(そのもの)あらば
召連(めしつる)べしと申/達(たつ)し。其日(そのひ)は帰館(きくはん)なし給ひ明朝(あす)夙(つと)めて評定所(へうでうしよ)へ出(いで)
給ひ。嶋田(しまだ)が動静(やうす)を俟(まち)給ふに小童(せうどう)がいへる如(こと)く。八幡宮別当(はちまんぐうべつとう)のわたりに。
大蔵(だいさう)と呼(よべ)る者(もの)あり。則(すなはち)庄官(せうや)具(ぐ)して庁(てう)に出(いづ)るに年齢(としは)四十/計(ばかり)にして。
脊高(せたか)く骨太(ほねぶと)にして。一辟(ひとくせ)ある者(もの)と見えたるが小次郎(ごじろう)も諸(とも)に庭上(ていせう)に蹲(うづくまり)