Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 186

ページ: 186

翻刻

らずやなんど戯(たは)れし折(をり)。母(はゝ)熟(とく)と覚(おほ)えたれば。兼(かね)ての行跡(げうぜき)もあれば。旁(かた〳〵) 彦次郎(ひこじろう)に必(ひつ)せるよし。管領家(くはんれいけ)へ申上しを。彼(かれ)早(はや)く聞聞(きゝ)しり。忽(たちまち)国遠(こくゑん)なしたり。 管領家(かんれいけ)にも便(びん)なく哀(あはれ)と覚(おぼ)し。厳敷(きびしく)吟味(ぎんみ)を下(くだ)し給ふといへ共(ども)。其在所(そのありどころ)更(さら) にしれず。其折柄(そのをりから)わたくし未(いまだ)三/歳(さい)にて。東西(なにごと)も一向(さらに)しらず。夫(それ)より母(はゝ)に 養育(やういく)せられ。成長(ひとゝなる)に及(およ)んで。はじめて其(その)始末(しまつ)を聞(き)き。無念(むねん)止(やみ)がたく。仮令(たとへ)。 百姓(ひやくせう)なりとても。不倶戴天(ふぐたいてん)の父(ちゝ)の讐(あだ)。一太刀(ひとたち)恨(うら)みて黄泉(くはうせん)の。父(ちゝ)が冥魂(めいこん) を祭(まつ)りばやと。心(こゝろ)のみは逸(はやれ)とも。母(はゝ)壱人(いちにん)を置(おか)ん事(こと)本意(ほゐ)ならず。さりとて的(あて)なき 旅(たび)の長途(ながぢ)を。伴(ともな)ひ行(ゆか)ん事も難(かた)ければ。心外(こゝろならず)も年月(としつき)を空(むら)しうせしに。 去冬(きよふゆ)母(はゝ)も病(やもふ)によりて。黄客(なきひと)となりしかば。心(こゝろ)ばかりに五旬の喪(も)を勉(つと)めし後(のち)。 纔(わづか)に残(のこ)りし田圃(たはた)以(も)て。路費(みちのつひえ)の代(しろ)となし当国(たうごく)は繁栄(はんゑい)の地(ち)なれば。若哉(もしや) 手繰(てがゝり)もあらん哉(や)と。当春(とうはる)より此地(このち)に彾俜(さまよひ)。専(もぱ)ら八幡太神(はちまんぐう)に祈誓(きせい)せしに 神明(しんめい)微孝(びかう)を憐(あはれ)み給ふにや。私(わたくし)が故郷(ふるさと)津国(つのくに)より。当地(たうち)へ下(くだ)る絹商人(きぬあきひと)に逢(あひ)