Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 187

ページ: 187

翻刻

たるに。彼者(かのもの)よろこひ。私(おのれ)を茶店(さてん)の閑所(かんじよ)へ連行(つれゆき)。密(ひそか)に告(つげ)て申やう。私(われ)過(せん) 日(ころ)鶴(つる)が岡八幡宮(おかはちまんぐう)の別当職(べつとうしよく)のもとにいたり。業(なりはひ)の絹(きぬ)を取広(とりひろ)げ商(あきなひ)居(ゐ)たる 折柄(をりがら)。壱人(ひとり)の浪士(らうし)めける者(もの)入来(きた)りて。彼家(かのいへ)の青侍(さふらひ)らと。心無隈(こゝろやすく)説話(はなし)するを 見るに。別人(べつじん)ならす大村彦次郎(おほむらひこじろう)なり。我(われ)は一驚(いつけう)なすといへども。渠(かれ)幸(さいは)ひに 我(われ)を知(し)らず。暫(しば)し雑談(ざうだん)して帰(かへ)りし跡(あと)。何人(なんひと)なり哉(や)と夫(それ)となく。住所(すまゐ)姓名(なまへ) を尋(たづ)ねしに。当春(とうはる)より、此館(このやかた)の裏辺(うら)に仮住居(かりすみ)する。嶋田大蔵(しまたたいざう)といふ 浪士(らうにん)にて専(もつぱ)ら仕官(ほうこう)を求(もと)むる間(ひま)に。儒書(うつしもの)を業(わざ)として。弊敷(やつ〳〵しく)すめると聞(きゝ) 得(え)るまゝ。早(はや)く其許(おんみ)にしらせんと。業(なりはひ)終(をはり)て帰村(きそん)せしに。豈(あに)図(はか)らん。彼者(かのもの)を 索捜(たづねん)と所(ところ)を去(さり)たるとは。其(その)残念(さんねん)いふばかりなかりしが。不測(ふしぎ)に于爰(こゝにて)相逢(あふ)た るよしを聞(き)き。天(てん)の与(あた)ふ処(ところ)なりと。直(たゞち)に彼家(かのいへ)に。踏込(ふんごま)んとは存(そん)じ候へども。 元来(もとより)私(われ)彼(かれ)を見しらず候故。彼(かれ)いかゝ陳(ちん)ぜんも計(はかり)がたく。故(かるがゆへ)に恐多(おそれおほく)も。君(くん) 庁(ちやう)に空言(いつはり)を申上候儀は。渠(かれ)か本名(ほんめう)を明(あか)させん謀(われ)ために候/処(ところ)。不測(ふしぎ)に自(みづか)ら