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出(で)て下(くだ)し給へば。藤綱(ふぢつな)謹(つゝしん)で頂戴(てうだい)し。押披(おしひら)きてこれを見るに大庄(たいせう)八(はつ)ヶ(か)所(しよ)。
三万貫(さんまんぐはん)を宛行(あておこな)ふ自筆状(じひつじやう)なりければ。藤綱(ふぢつな)驚(おどろ)き巻収(まきをさ)め。有難(ありがた)き御(こ)
加恩(かおん)。心魂(しんこん)に徹(てつ)して忘却(ばうきやう?)しがたし。しかれども今(いま)何事(なにごと)かありて斯(かく)過分(くはぶん)の庄園(せうゑん)
を給(たま)はり候やらん。時頼入道(ときよりにうだう)うち笑(ゑみ)て。兼(かね)て汝(おんみ)が忠誠(ちうせい)感(かん)するの所。殊(こと)さら
過日(くはじつ)忠言(ちうげん)によつて。天下(てんか)穏(おたやか)に上下(しやうか)親睦(しんぼく)。四民(しみん)安堵(あんど)の思(おも)ひを為(なす)こと。全(まつた)く
其許(おんみ)の忠勤(ちうきん)なり。加之(しかのみならず)。国家鎮護(こくかちんご)祈願(きぐはん)のため。朕(われ)鶴(つる)が岡(おか)に参籠(さんろう)せし
に。既(すで)に今暁(こんきやう)衣冠(いくはん)正(たゞ)しき老翁(らうじん)の来(きた)りて。汝(なんぢ)正道(せうだう)を守(まも)りて天下(てんか)を平治(へいち)し。
慈悲(じひ)をもつて民(たみ)を養(やしな)ひ。仁義(じんき)廉直(れんちよく)惻隠(そくいん)辞譲(じじやう)の志(こゝろざし)。天地神明(てんちしんめい)に通(つう)じ
観応(かんわう)まします処(ところ)。猶(なほ)政道(せいたう)を直(なほ)くし永(なか)く安全(あんせん)の世(よ)を保(たもた)んと欲(ほつ)せば。聊(いさゝか)も
私(わたくし)を存(ぞん)せず。よく物理(もつり)に通(つう)じたる。青砥藤綱(あをとふぢつな)と。国政(こくせい)を談(だん)すべしと。灼然(あり〳〵)
と示(しめ)し給ふと覚(おほ)えしは是(これ)暁(あかつき)の霊夢(れむ)なり。仍(よつ)て将軍(しやうぐん)より賜(たま)ふ処(ところ)なれと。
全(まつた)く八幡宮(はちまんぐう)の神勅(しんちよく)なれば。必(かならず)謙退(けんたい)あるべからず。又(また)朕(われ)帰路(きろ)にて。滑(なめり)