Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 229

ページ: 229

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なし居(ゐ)給ひしに。原来(もとより)宏々(くわう〳〵)たる広(ひろ)き前栽(せんさい)。向(むか)ふ遥(はるか)に山(やま)を築(きづ)き。前(まへ)には清々(せい〳〵) たる流水(りうすい)を引(ひい)て。花木(くわほく)緑樹(りうじゆ)梢(こすへ)を争(あらそ)ひ枝(ゑだ)を交(まじ)へ。奇石(きせき)珍岩(ちんがん)巧工(たくみ)を尽(つく)し たるが。不図(ふと)築山(つきやま)のもとより。小(ちいさ)き陰火(ゐんくわ)現(あらは)れ出(いで)て。看々(みる〳〵)其/団火(だんくわ)分々(ぶん〳〵)として 三(み)つとなり五(いつ)つとなり。一瞬(またゝく)うちに数百(すひやく)となり。築山(つきやま)の上下(うへした)。樹間(じゆかん)の左右(さゆう)飄々(ひやう〳〵) 転々(てん〳〵)として漂(たゝよふ)がごとく歩(あゆむ)に似(に)たり。館内(くわんない)の仕女等(しぢよら)は。あつと喚(さけ)びて部屋々々(へや〳〵)に 逃入(にげい)り。壮士等(そうしら)は得物(えもの)を提(さけ)て立騒(たちさわ)ぐを。時頼(ときより)これを制(せい)しつゝ。枕箱(まくらばこ)より 燧帒(ひうちふくろ)を取出(とりいだ)し。石金(いしかね)を合(あは)して丁(てう)と打(うち)給へば。不測(ふしぎ)や彼方(かなた)に充々(みち〳〵)たる陰(ゐん) 火(くわ)。忽(たちまち)破多(ばた)〳〵と消(きへ)て。一箇(ひとつ)も残(のこ)るはあらざりけり。近士等(きんしら)は又(また)一驚(いつけう)し 其故(そのゆへ)を伺(うかゞ)ふに。時頼(ときより)莞爾(くわつし)として。この陰火(ゐんくわ)は狐(きつね)の仕業(しわさ)にして。俗(ぞく)に狐(きつね)の 千火(せんび)といへり。燧火(ひうち)を以(もつ)てこれを滅(めつ)せしむるは。彼(かれ)は陰火(ゐんくわ)これは陽火(ようくわ)。陰(ゐん)の 陽(よう)に敵(てき)する事(こと)を聞(きか)かず。故(かるかゆへ)に一打(ひとうち)にして消(け)せしむるは。更(さら)に怪(あやしむ)にたらずと 泰然(たいぜん)として答(こたへ)給ふに。近士等(きんしら)其(その)即智(そくち)を感嘆(かんたん)なしたりける。かくて良(やゝ)