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これより人民(じんみん)己(おの)が家(いへ)に狐(きつね)啼(なく)ことあれば。此歌(このうた)を書て張(はる)に。忽(たちまち)其音(そのこへ)をとゞめ
災害(わざはひ)を免(まぬか)る。其不測(そのふしぎ)を語(かたり)つぎ言次(いゝつぎ)て。数百年(すひやくねん)の今の世(よ)まで。咒(まじなひ)となりしは時頼(ときより)の
績(いさほ)にして。最(もつとも)尊(たつと)むべきことにこぞ
藤綱廉直論音物是非話(ふじつなれんちよくいんもつのせひをろんすること)
摂津国大江(せつのくにおほえ)の辺(ほとり)に小八郎といへる者(もの)あり。元来(ぐはんらい)富有(ふゆう)にして田圃(でんはた)多(おほ)く持ち
召遣(めしつかひ)数多(あまた)にして有徳(うとく)の者(もの)なるが。女児(むすめ)壱人もてり照子(てるこ)と名づけて。春秋(とし)
既(すでに)二八の春(はる)を迎(むかふ)るに。風姿(すがた)艶容(かたち)を譬(たと)ふるに。西施貴妃(せいしきひ)。衣通(そとをり)小町を以て
すとも。猶(なほ)事足(ことた)らずと思(おほ)ゆめれ。ことさら志(こゝろざ)し貞実(ていじつ)にして。而(しか)も怜悧(れいり)なれば読(とく)
書(しよ)紡績(はうせき)はもとより。糸竹(いとたけ)の業(わざ)までも。人/並々(なみ〳〵)に勝(まさ)れしかば。これを見聞(みき)く
遠近(へんきん)の壮夫等(わかうど)。貴(たかき)も賎(いやしき)も心を動(うごか)さゞるは無(なか)りしが。両親(りやうしん)寵愛(てうあい)誠(まこと)に掌(しや)
玉(きよく)のごとく。何卒(なにとぞ)花洛(みやこ)より。良縁(よきゑにし)を以て聟(むこ)を養(やしなは)めと専(もつは)ら索求(たづねもと)めける。
爰(こゝ)に当郷(たうこう)の領主(りうしゆ)有田治部(ありたちぶ)左衛門といへるは。北條氏族(ほうてうしそく)に聊(いさゝか)内縁(ないゑん)ありといへ