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駅馬宿駕(うまかご)にて道(みち)を急(いそ)がせ。五日(いつか)にして鎌倉(かまくら)に着(ちやく)し。従来(これまで)有田(ありた)が無体(むたい)を
承(うけたまは)り来(きた)りと雖(いへど)も。今度(このたび)爾々(しか〳〵)の命令(いひつけ)。承伏(せいふく)仕(つかまつ)りがたき趣(おもむき)を以(もつ)て。評定所(へうでうしよ)に
訴(うつたへ)れば。則(すなはち)領主(れうしゆ)一藤太(いつとうだ)を急(きう)に召(めし)て。双方(さうほう)対決(たいけつ)なさしむるに。小(こ)八郎か申/状(でう)
明白(めいはく)にして。一事(いちじ)も滞(とゞこふ)る事なし。却(かへつ)て有田(ありた)が返答(へんとう)甚(はなはだ)胡乱(うろん)にて。申訳(まをしわけ)取(しど)
次筋計(ろもとろ)成(なる)。其首尾(そのしゆび)貫(つらぬ)き難(がた)く。於茲(こゝをおゐて)理非(りひ)明白(めいはく)にして。小(こ)八郎が申/条?(でう)に
違(たが)はずといへども。其処(そのところ)の領主(れうしゆ)といひ。殊(こと)に北条氏族(ほうてうしぞく)に内縁(ないゑん)もあれば。旁(かた〳〵)以(もつ)て先(まづ)
其日(そのひ)の決断(けつだん)を延引(えんいん)し。重職(ぢうやく)評定衆(へうでうしゆ)さま〴〵内評(ないだん)して。流石(さすが)に領主(れうしゆ)を倒(たふ)
さんも。後日(ごにち)執権(しつけん)の聞(きこ)へも如何(いかゞ)なれと。領主(れうしゆ)にも非(ひ)を曲(まげ)て利(り)を付(つけ)。双方(さうほう)五部(こぶ)
五部(ごぶ)の判断(はんだん)をぞ付(つけ)たりける。青砥左衛門尉藤綱(あほとさへもんのでうふぢつな)。其頃(そのころ)既(すで)に評定衆(へうでうしゆ)に連(つら)な
りしが。始(はしめ)より一言(いちごん)をもいはで有(あり)しが。此期(このとき)辞(ことば)を発(いだ)し。有田一藤太(ありたいつとうだ)の一条(いちでう)弥以(いよ〳〵)
左(さ)の裁許(さいばん)あらんには。我(われ)只今(たゞいま)表(ひやう)を上(あげ)て。此職(このしよく)を辞(じ)し申さん。其後(そのご)決談(けつだん)致(いた)
さるべし。抑(そも〳〵)評定所(へうでうしよ)といへは理非(りひ)明白(めいはく)邪正(じやせう)決断(けんだん)【「けんだん」は「けつだん」ヵ】の場所(ばしよ)なるに。彼(かれ)を曲(まげ)