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下(か)宿老(しゆくろう)の輩(ともがら)。いづれもはつとひれ伏(ふし)て。頭(かしら)を挙(あげ)る人(ひと)なかりけり。去程(さるほど)に
時頼(ときより)は此日(このひ)より。最明寺(さいめうじ)に閑居(かんきよ)したまひ。親類(しんるい)家族(かぞく)たりとも面会(めんくはい)なく。
たゞ二階堂(にかいどう)と藤綱(ふぢつな)両人(りうにん)は。折(おり)〳〵参(まい)る事(こと)を免(ゆる)し。其余(そのよ)且(かつ)て室(しつ)に
入(い)られず。朝夕(あさゆう)仏名(ぶつめう)を唱(とな)へ。現当(げんとう)二世(にせ)を願(ねが)ひ給ふより外(ほか)なし。理(ことは)りなる哉(かな)
時頼入道(ときよりにうだう)は。天台法相律三宗(てんだいはふさうりつさんしう)の知識(ちしき)に相看(さうかん)し。仏法(ぶつほう)の奥儀(おくぎ)を
極(きは)め。又(また)大覚禅師(だいがくせんじ)其外(そのほか)あまたの大徳(たいとく)に逢(あい)て。心地(しんち)大悟(たいご)せられたり。
故(よつ)に【「故に」は「ゆえに」ヵ「よつて」ヵ】武門(ぶもん)をすてゝ。一大/因縁(ゐんゑん)の工夫(くふう)にのみ。光陰(かうゐん)を過(すご)し給ひしに。文応(ふんわう)
二/年(ねん)の秋(あき)の末(すへ)より心地(こゝち)例(れい)ならず病床(びやうしよ)に臥(ふし)給ふといへども。曽(かつ)て医師(ゐし)
鍼博士等(しんはかせら)を召(め)させ給はず。諸寺(しよじ)諸山(しよさん)の祈祷(きとう)を一切(いつさい)とどめ給ひて。たゞ
天寿(てんじゆ)こゝに尽(つき)て。諸仏(しよぶつ)の来迎(らいがう)をまち給ふより。外(ほか)あらざるよし聞(きこ)えけ
れば。執権時宗(しつけんときむね)さま〴〵心(こゝろ)をいため給へども。一切(いつさい)対面(たいめん)をなし給はねば。
一入(ひとしほ)御歎(おんなげき)ふかくまし〳〵給ふ。重職(でうしよく)頭人(とうにん)評定衆(へうでうじゆ)は。もとより鎌倉中(かまくらぢう)是(これ)を