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戦(せん)なさんずもの有(あり)とも思はず。不如(しかず)徒(いたづら)に追討(つひたう)の兵(へい)を待(また)んより。寧(むしろ)運(うん)を天に
まかせ。遮(さへぎつ)て平家(へいけ)を追罰(ついばつ)なさんにはと。密(ひそか)に謀略(ばうりやく)を運(めぐら)し給ふ折節(をりふし)。洛北(らくほく)
高雄山(たかをさん)の文覚上人(もんがくせうにん)。平家追伐(へいけついばつ)の院宣(いんせん)を頼朝(よりとも)に下(くっだ)され。早(はや)く誅伐(ちうはつ)せん
事を勧(すゝ)む。頼朝(よりとも)内々(ない〳〵)思(おほ)し立(たち)給ふ折(をり)からなれば。謹(つゝしん)で領承(れうせう)じ。直(たゞち)に時政(ときまさ)と商(しやう)
議(ぎ)して。則(すなはち)安達藤九郎盛長(あだちとうくろうもりなが)を使(つかひ)として。源家(げんけ)恩顧(おんこ)の輩(ともがら)を招(まね)くに。土肥(とひの)七郎
実平(さねひら)。同/男(なん)遠平(とをひら)。岡㟢(おかざき)四郎/義真(よしざね)を始(はじめ)として。佐々木(さゝき)。工藤(くどう)。宇佐美(うさみ)。加藤(かとう)等(ら)
召(めし)に応(おう)じて参集(さんしふ)し。軍議(ぐんぎ)計策(けいさく)を定(さだ)め。北条時政(ほうでうときまさ)を大将(たいしやう)とし。嫡子(ちやくし)宗(むね)
時(とき)。弟(おとうと)義時(よしとき)。佐々木太郎(さゝきたろう)。兄弟(けうだい)四人(よにん)。土肥(とき)【とひヵ】。土屋(つちや)。左奈田(さなだ)。猿嶋(さるしま)。其外(そのほか)家子(いへのこ)郎(らう)
等(どう)。屈強(くつけう)の兵(つはもの)八十五/騎(き)を以(もつ)て。先(まづ)当国(とうごく)の目代(もくだい)。八牧(やまき)に住(ぢゆ)せし和泉判官兼隆(いづみはんぐわんかねたか)
を夜討(ようち)にして。一挙(いつきよ)に兼隆(かねたか)を打亡(うちほろば)し。首途(かどいで)よしと大に勇(いさ)に【「に」は「み」ヵ】。夫(それ)より北条(ほうでう)を出(いで)て
相州土肥郷(さうしうとひこう)に出張(しゆつてう)し。其勢三百/余騎(よき)にて。石橋山(いしばしやま)に陣(ぢん)し給ふ。平家(へいけ)の士(さふらひ)大庭(おほば)
三郎/景親(かげちか)。俣野(またの)五郎。梶原(かぢはら)曽我(そが)等三千/余騎(よき)にてこれを支(さゝ)ゆ。北条