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成(なり)しかば。廣常(ひろつね)はじめ到参(とうさん)の人々。斯(か)ばかり大勢(おほせい)を卒(そつ)し参(まゐり)たれば殊(こと)に喜悦(きゑつ)も
有(ある)べきに却(かへつ)て遅参(ちさん)をとがめらるゝ大量(たいれう)。いかさま天下を平治(へいち)たまふべき。御大将(おんたいせう)
の御器量(ごきれう)なりと恐(おそ)れ入てぞ感(かん)じけり。爰(こゝ)に千葉介常胤(ちはのすけつねたね)言上(ごんぜう)しけるは。今此/御(ご)
陣(ぢん)は専用(せんよう)の地(ち)にあらず。相州(さうしう)鎌倉(かまくら)こそ曩祖(のうそ)の勝地(しやうち)にして。地形(ちげう)堅固(けんご)の
要害(やうかい)。こと更(さら)四方(しはう)の国郡(こくぐん)に便宜(びんぎ)ありと申により。衆評(しゆひやう)しば〳〵ありて。御陣(ごちん)を
鎌倉(かまくら)へ移(うつ)されんがため。先(まづ)御館(おんやかた)を造営(ざうゑい)せしめ。良辰(れうしん)を籤占(えらん)て御移住(ごゐぢう)
ありし程(ほど)に。畠山(はたけやま)。葛西(かつさい)。足立(あだち)を始(はじめ)として。譜代(ふだい)恩顧(おんこ)の大名小名。われも〳〵と
馳参(はせまゐ)り。既(すで)に御勢(おんせい)百万/騎(き)にも余(あま)りしかば。各位(おの〳〵)第宅(やしき)を造立(ざうりう)なすほどに。茅(ばう)
屋(おく)転(てん)じて殿舎(でんしや)となり。荒原(くわうげん)変(へん)じて城廓(ぜうぐわく)となる。原来(もとより)海郎野人(れうしひゃくせう)の外(ほか)は住(す)む
人なかりしも。日々(ひゞ)に諸物(しよぶつ)の市(いち)をたて。店(みせ)を餝(かざ)り。商賈(せうか)東西(とうさい)に走(はし)り。工職(こうしよく)南北(なんぼく)に
廻(めぐ)り。町を作(つく)り小路(こうじ)を開(ひら)き。おさ〳〵都(みやこ)におとらさる。繁花(はんくは)の地(ち)とはなりにける。
去程(さるほと)に都(みやこ)には。此(この)注進(ちうしん)日々に櫛(くし)の歯(は)を引(ひく)がことく。早(はや)く頼朝を誅罰(ちうばつ)したまは