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故(ゆゑ)なくして社前(しやぜん)に死(し)する事(こと)三度(さんと)。諸人(しよにん)怪(あやしみ)思(おも)ふ処(ところ)に。建仁(けんにん)三年七月
廿日。頼家卿(よりいへけう)卒爾(にわか)に御発病(ごほつびやう)まし〳〵。時(とき)となく心身(しん〴〵)悩乱(のうらん)し絶倒(ぜつとう)昏冥(こんめい)般々(しば〳〵)【「般々」「数々」ヵ】
なり。内外(うちと)の男女(なんによ)驚(おどろ)き騒(さわ)ぎ。和丹両流(わたんれうりう)の典医(てんい)博士(はかせ)。昼夕(よるひる)御/病状(びやうじやう)に昵近(ちつきん)
して。薬治(やくぢ)の術(じゆつ)を尽(つく)すといへども。更(さら)に怠(おこた)り給ふ色(いろ)なく。八月/下旬(げじゆん)にいたりては。
いよ〳〵危急(ききう)に迫(せま)り給ふ。抑(そも〳〵)頼家卿(よりいゑけう)に御子(みこ)三人まします。御嫡男(ごちやくなん)を一幡君(いちまんきみ)と
申。比企判官能員(ひきのはんぐわんよしかず)が娘(むすめ)の腹(はら)に出生(しゆつせう)し給ふ。第(だい)二は女子(によし)にて。則/四代将軍(よだいしやうぐん)の御台(みたい)
所(ところ)に備(そな)はり給ひ。第三/善哉君(ぜんさいきみ)。後(のち)鶴(つる)ヶ(が)岡(おかの)別当(べつたう)たらんとす。頼家卿(よりいへけう)北条(ほうでう)及(およ)ひ
比企能員(ひきよしかず)。其外/老臣(らうしん)の面々(めん〳〵)を枕上(まくらもと)に近付(ちかづけ)給ひ。朕(われ)不幸(ふかう)にして沈痾(ちんあ)に罹(かゝり)
命(めい)已(すで)に旦夕(たんせき)に迫(せま)る。かるがゆゑ今日(けふ)よりして。天下(てんか)の政道(せいたう)を弐(ふたつ)に分(わか)ち。関(せき)より
東(ひがし)三十三ヶ国を。嫡男(ちやくなん)一幡丸(いちまんまる)へ譲(ゆづ)り。関西(くわんさい)三十三ヶ国(こく)を。我弟(わがおとうと)千寿丸(せんじゆまろ)に
《割書:実朝|公なり》与(あた)ふ。尤(もつとも)時政(ときまさ)執権(しつけん)して。両人互(ふたりとも)に睦(むつましく)して。仮初(かりそめ)にも隔心(きやくしん)なからしめよ。
比企能員(ひきよしかず)は殊更(ことさら)に。一幡(いちまん)には所縁(しよゑん)あれば。時政(ときまさ)と心(こゝろ)を合(あは)せ。よく守護(しゆご)な