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せよと命(めい)し給ひ。猶(なを)姫君(ひめきみ)。三男/善哉君(せんざいぎみ)の事。其外/女房(にようはう)近習(きんじゆ)の者(もの)へも。そのほど
程(ほど)に遺物(ゆいもつ)とし。金銀(きん〴〵)重器(ちやうき)武具(ぶぐ)太刀(たち)等(とう)を譲定(じやうでう)なし給へば。北条(ほうでふ)已下(いか)昵近衆(ちつきんしゆ)
女房等(にようばうらも)涙(なみだ)をおさへて承(うけたまは)【「承」のフリガナ「うけ給は」】れば。頼家卿/此(この)とき飾(かざり)をおろし。入道(にうだう)染衣(ぜんゑ)の身(み)と
なり給ひ。専(もつぱ)ら終焉(しうゑん)を待(まち)給へえり。然(しか)るに一幡丸(いちまんまる)の外祖(くはいそ)。比企判官(ひきのはんぐわん)能員(よしかず)は。この
遺命(ゆいめい)を承(うけたまは)るより。心中(しんちう)大に惑溺(わくてき)し。惣(さう)じて文武(ぶんぶ)の習(なら)ひにて父(ちゝ)の遺跡(ゆひせき)相違(さうゐ)なく
嫡男(ちやくなん)たる者(もの)。相続(さうぞく)なすこと正道(せうだう)なれ。しかるを天下(てんか)を弐(ふた)つに分(わか)ち。嫡男(ちやくなん)と舎弟(しやてい)に
与(あた)へ譲(ゆづ)る事(こと)。和漢(わかん)とも希(まれ)なる計(はから)ひ。察(さつ)する処(ところ)一幡君(いちまんきみ)。三代/将軍(しやうぐん)となり給はゞ権(けん)は
我家(わかいゑ)にあつて。北条(ほうてう)の武威(ぶい)忽(たちまち)薄(うす)からん事(こと)を思(おも)ひ。尼君(あまきみ)と商議(しやうぎ)なし。一旦(いつたん)天下(てんか)を
弐つとすれど。終(つひ)には一幡君(いちまんぎみ)を癈(はい)し除(のぞ)き。千寿君(せんじゆきみ)を将軍となして。権(けん)を一人(いちにん)
握(にぎ)らん結構(けつこう)。茲(こ)は暫(しばら)くも猶予(ゆうよ)做(し)がたしと。其夜(そのよ)密(ひそか)に頼家卿に謁(ゑつ)し。侍女(しぢよ)らを
遠(とふざ)け密(ひそか)に言上(ごんせう)なしけるは。今日(こんにち)御遺命(ごゆいめい)の趣(おもふき)謹(つゝしん)て承伏(せうふく)し奉る去(さり)ながら。倩(つら〳〵)
時勢(じせい)を考(かんがふ)るに今(いま)天下国家(てんかこくか)の権勢(けんせい)は。時政/壱人(いちにん)に帰(き)するが故(ゆゑ)に政事(せいじ)に非道(ひだう)の