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仁田忠常(につたたゞつね)踊(をど)り出(いで)。無図(むづ)と能員(よしかず)の両手(れうて)を取(とれ)ば。心得(こゝろえ)たりと能員(よしかず)は。振離(ふりはな)さ
んとする処(ところ)に。民部入道(みんぶにうだう)走(はし)りより。刀(かたな)を抜(ぬく)よと見えけるが。能員(よしかず)が首(くび)は前(まへ)に落(おち)たり
ける。比企(ひき)の従者(じうしや)此由(このよし)をきゝ。息(いき)を切(きつ)て館(やかた)にかへり。能員(よしかず)討(うた)れ給ふと告(つぐ)るに。
嫡子(ちやくし)比企(ひき)四郎/殊(こと)に驚(おどろ)き。此上は何(なに)をか期(ご)せんと。一族郎党(いちぞくらうとう)を引率(いんそつ)して。
一幡君(いちまんぎみ)の御在所(ございしよ)。小御所(こごしよ)に駈参(かけまゐ)り。門戸(もんこ)を固(かた)め郎等(らうどう)に守(まも)らせ。自(みづ)から幼君(やうくん)
を守護(しゆご)なし奉り。謀叛(むほん)の色(いろ)をぞあらはしける。時政(ときまさ)廣元(ひろもと)兼(かね)て期(ご)したる事なれば
江馬(えまの)四郎同太郎を大将(たいしやう)として。小山(こやま)畠山(はたけやま)三浦(みうら)和田(わだ)の一族等(いちそくら)。手勢(てせい)引具(ひきぐ)し駈(は)せ
向(むか)ひ。先(まつ)箭軍(やいくさ)を始(はじ)め。箭種(やだね)を惜(をし)まず散々(さん〴〵)に射立(いたて)しかば。敵(てき)も味方(みかた)も手負(てをひ)死人(しにん)。
一時(いちじ)に山(やま)をなすといへども。互(たがい)に知合(しられあふ)たる対戦(たいせん)なれば。我(われ)人(ひと)名(な)を恥(は)ぢ。見聞(けんもん)を憚(はゞか)り。身(しん)
命(めい)を惜(をし)まず。踏越(ふみこえ)〳〵既(すで)に門塀際(もんぎは)まで攻付(せめつけ)たり。此(この)動乱(とうらん)を聞(きく)よりも。須破(すは)軍(いくさ)こ
そ始(はじ)まりたると。人民(じんみん)上(うへ)を下(した)へと悶着(もんぢやく)す。大名小名(だいめうせうめう)御家人(ごけにん)等(ら)。何(なに)の趣意(しゆい)とはしらね
ども。将軍(しやうぐん)の御所(ごしよ)へ参(まゐ)るあれば。北条亭(ほうてうてい)を守護(しゆご)し。或(あるひ)は寄手(よせて)の後陣(ごぢん)に加(くは)はり。東西(とうざい)