← 前のページ
ページ 47 / 491
次のページ →
翻刻
事(こと)あり哉(や)と尋(たつね)給へば。侍臣等(じしんら)包(つゝむ)によしなく。比企能員(ひきよしかず)が隠謀(いんばう)あらわれ。則(すなはち)北
条にて能員(よしかす)を切害(せつかい)す。故(かるがゆゑ)に嫡子(ちやくし)四郎。小御所(こゞしよ)に籠(こも)り。江馬(えま)太郎同四郎。
其外/三浦(みうら)和田(わた)等(とう)の。勢(せい)を引受(ひきうけ)合戦(かつせん)におよぶ処(ところ)。多勢(たせい)に防戦(ばうせん)かなひがたく。終(つひ)
に小御所(こゞしよ)に火(ひ)を放(はな)ち。恐(おそれ)なから比企四郎。若君(わかきみ)を懐(いだ)き猛火(めうくは)に飛入(とびいり)。比企(ひき)の一類(いちるい)
悉(こと〴〵)く亡(ほろひ)たる由。只今(たゞいま)注進(ちうしん)ありし処(ところ)なりと告(つげ)奉る。頼家卿(よりいゑけう)は暫(しば)し忙然(はうぜん)として在(ましませ)しが。
朕(われ)憗(なまじひ)に死(しに)もやらず。斯(かゝ)る愁(うれひ)を聞(きく)こそ悲(かな)しけれ。嗟嘆(あゝ)憐(あはれむ)へきは一幡(いちまん)。および比企一類(ひきいちるい)。
悪(にく)むべきは北条氏族(ほうでうしぞく)。たとへ能員(よしかず)が非道(ひだう)なるとも。一幡に何(なに)の恨(うら)みかある。諾(うべ)も能員
が申せしごとく。叛逆(ほんぎやく)の志(こゝろ)あるに極(きはま)れり。此上は忍(しの)ぶべからずと。昵近(ちつきん)堀藤次親家(ほりとうしちかいへ)を以(もつ)て。
北条(ほうでう)誅伐(ちうばつ)の御書(ごしよ)を。和田(わた)左衛門尉/義盛(よしもり)。仁田(につた)四郎/忠常(たゞつね)にたまふ。義盛(よしもり)御書
を拝(はい)し。一驚(いつけう)せしが謹(つゝしん)て領承(れうぜう)し。使節(しせつ)を返(かへ)して後(のち)。急(いそ)ぎ忠常(たゞつね)を招(まね)き申やう。君(くん)
命(めい)もだし難(かたし)し【「し」衍字ヵ】といへども。我(われ)倩(つら〳〵)考(かんかふ)るに。将軍(せうぐん)一旦(いつたん)の御/怒(いかり)はさる事なれ共(とも)。恐(おそれ)ながら先君(せんくん)には
事変(ことかは)り。天下(てんか)の政務(せいむ)はいさゝか掛念(けねん)し給はず。朝暮(てうぼ)遊楽(ゆふらく)に長(てう)せさせ給ひ。剰(あまつ)さへ女(ぢよ)