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色(しよく)に耽(ふけ)りて。無道(ぶだう)の行(おこな)ひ一方(ひとかた)ならず。文武(ぶんぶ)および人民等(じんみんら)も。君(きみ)を恨(うら)み。罵(のゝし)る者(もの)少(すくな)
からず。今般(こたび)能員(よしかず)が隠謀(いんばう)も。君(きみ)は讒奏(ざんさう)によつて北条を憎(にくみ)給へども。全(まつた)く君家(くんか)の御為(おんため)
ならず。己(おのが)後栄(こうゑい)を計(はか)らんためなり。故(かるがゆへ)に天これを罰(ばつ)して一朝(いつてう)にして亡(ほろ)ぶ。抑(そも〳〵)天下(てんか)は一人(ひとり)の天
下に非(あら)ず。則(すなはち)天下(てんか)の天下なり。是(こゝ)を以(もつ)て考(かんが)ふれば。たとへ時政(ときまさ)に内謀(ないはう)あるとも。即今(いま)
算(かぞ)ふべき罪(つみ)なくして。却(かへつ)て其(その)罪(つみ)君(きみ)にあり。台命(くんめい)に戻(もと)り随(したが)はざるは。最(もつども)不忠(ふちう)不義(ふぎ)
には似(に)たれども。先君(せんくん)蛭小島(ひるがこじま)より起(おこ)り。千辛万苦(せんしんばんく)を凌(しの)ぎ。鎌倉(かまくら)を草業(さうげう)し給ひ。
日本(につほん)惣追捕使(さうつひふし)の基(もとひ)を開(ひら)き。漸(やう〳〵)栄花(ゑいぐは)の御身(おんみ)と成(なり)給ひしに。当君(たうくん)かくのごとく
文武(ふんぶ)に疎(うと)く。人民(しんみん)の望(のぞみ)を失(うしな)ひ給へば。今(いま)北条(ほうでう)及(およ)び我々(われ〳〵)まで。補佐(ほさ)し奉るがゆゑ
にこそ。国家(こくか)先(まづ)安穏(あんおん)に似(に)たりといへども。徒(いたづら)に北条の氏族(しぞく)を斃(たふ)さば。人心(じんしん)忽(たちまち)交(こも〳〵)
離(はな)れ。天下動乱(てんかとうらん)を曳出(ひきいだ)すべきか。不如(しかず)此(この)有増(あらまし)を北条に告(つげ)て。無難(ぶなん)に当君(たうくん)を
退(しりぞ)け奉り。御幼稚(ごようち)なれども千寿公(せんきゆこう)を。三代将軍(さんたいせうぐん)と仰(あふ)ぎ。老臣(らうしん)の面々(めい〳〵)一致(いつち)して
幼君(やうくん)補佐(ほさ)なさば。仮令(たとひ)北条/内謀(ないはう)を発(はつ)す共(とも)。奚(なん)ぞ恐(おそ)るゝに足(た)らん哉(や)と