Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 52

ページ: 52

翻刻

密(ひそか)に弓(ゆみ)に箭(や)を番(つが)ひ。ねらひ寄(よつ)て兵(へう)と射(い)る。忠常の運命(うんめい)こゝにや尽(つき)けむ。 胸板(むないた)はつしと射込(いこみ)られ。馬上(ばしやう)にたまらず嘡(どう)と落(おつ)るを。景廉(かけかど)すかさず走(はしり)よつて。 終(つひ)に首(くび)を討落(うちおと)せり。無慙(むざん)といふも余(あま)りあり。軍(いくさ)散(さん)じてのち。時政(ときまさ)は此/騒動(さうどう)を聞(きゝ)。 殊(こと)に驚(おどろ)き且(かつ)傷(いた)み。其/本末(もとすへ)始終(しじう)を糺問(きつもん)【きうもんヵ】するに。江馬(えま)が館(やかた)に兄弟(けうたい)が。是非(ぜひ)の 問答(もんだう)にも及(およ)ばずして。切入(きりいり)たるより事発(ことおこ)れば。江馬(えま)の臣等(しんら)を咎(とがむ)べきにあらず。 企(まつた)【全ヵ】く兄弟(けうだい)か短慮(たんりよ)より。さしも名家(めいか)を斃(たふ)せしは。比企能員(ひきよしかず)が幽魂(ゆいこん)の。恨(うらみ)を かへせし処(ところ)ならんと。恐怖(けうふ)するものも多(おほ)かりけり。斯(かく)て頼家(よりいへ)卿は。仁田忠常(につたたゞつね)一類(いちるい) 死亡(しばう)せし由(よし)を聞(きゝ)たまひ。卒忽(そこつ)より起(おこ)りし事(こと)はしろし召(め)さで。嗟呼(あゝ)我(われ)過(あやま)てり 過(あやま)てり。あたら武士(ものゝふ)を殺(ころ)せしは。我(わが)刃(やいば)にて害(がい)せしに等(ひと)しと。ひたすら後悔(こうくわい)なし給ふ。 斯(かゝ)りし程(ほど)に時政は。尼御台(あまみだひ)の計(はから)ひとして。頼家卿(よりいへけう)を伊豆(いづ)の国(くに)。修善寺(しゆせんじ)に 御移住(ごいぢう)なし奉る。御治世(ごちせい)漸(やう〳〵)五年なり。其後(そのゝち)時政の密意(みつい)によつて。修善(しゆせん) 寺(じ)に刺客(しかく)をつかはし。謀(はかつ)て浴室(よくしつ)にて弑(しい)し奉る。御/歳(とし)いまだ廿三歳。さしも