Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 54

ページ: 54

翻刻

偏執(へんしう)嫉妬(しつと)は女のならひなるに。殊更(ことさら)嫡子(ちやくし)義時(よしとき)舎弟(しやてい)時房(ときふさ)は。父(ちゝ)時政(ときまさ)舎弟(しやてい)時房(ときふさ)は。父(ちゝ)時政(ときまさ)にも劣(おと) らぬ権勢(けんせい)。就中(なかんづく)政子(まさご)の前(まへ)は。法尼(はふに)ながらも。大小名(だいせうめう)に尊崇(そんさう)を請(うけ)給ひ。惣(さう)じて先(せん) 腹(ばら)の一族(いちそく)威勢(いせい)盛(さかん)なるを。常々(つね〳〵)憎(にく)み折(をり)も哉(かな)。義時(よりとき)【よしときヵ】時房(ときふさ)を滅亡(めつばう)させ。実子(じつし)政(まさ) 範(のり)を以(も)て執権職(しつけんしよく)とし。終(つひ)には将軍(しやうぐん)も備(そな)へんと胆(きも)太(ふと)くも工(たく)まれしが。天(てん)其(その)不貞(ふてい) を憎(にく)み給ひ。愛子(あいし)なる権頭(ごんのかみ)政範(まさのり)実朝君(さねともきよ)【「きよ」は「きみ」ヵ】の御台所(みだいところ)迎(むかひ)として。善美(せんび)を尽(つく)して上(せう) 京(けう)せしが帰路(きろ)におよんで発病(はつびやう)し。漸(やう〳〵)鎌倉(かまくら)に帰館(きくわん)して。程(ほど)なく卒(そつ)せられければ。牧(まき)の方(かた) の歎(なげ)き諭(たとふ)るに物(もの)なく。これよりは心(こゝろ)も和(なご)むべきに。愈(いよ〳〵)邪慳(じやけん)増長(ざうてう)し。斯(かく)■(べん)々(〳〵)【緩々(かんかん)ヵ】と時節(じせつ) を待(まつ)がゆゑ。思(おも)はざる歎(なげ)きも有(あ)れ。此上(このうへ)は不日(ふじつ)に実朝卿(さねともけう)を人しれず害(がい)し。聟(むこ)朝雅(ともまさ) を以(も)て。四代/将軍(しやうぐん)と倣得(なしえ)ずして有(ある)べきやと。武蔵守(むさしのかみ)に内謀(ないばう)を告(つ)げ。己(おのれ)に諂(へつ)らふ 大小名(たいせうめう)を。勧(すゝ)めて昇進(しやうじん)なさしめ。心に随(したが)はざるを讒(ざん)して退去(たいきよ)せしめ。既(すで)に忠勇(ちうゆう)無二(むに)と いふなる。畠山重忠(はたけやましげたゞ)一類(いちるい)。無冤(むじつ)の讒(ざん)に亡(ほろ)びしも皆(みな)牧(まき)の方(かた)の所為(なすところ)なり。実哉(げにや)天(てん) 不言(ものいはず)人(ひと)をして言(いは)しむの金言(きんげん)。此頃(このころ)牧(まき)の方(かた)の隠謀(いんばう)により。不日(ひならず)に大乱(たいらん)あるべしと