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聞(き)く人/舌(した)を捲(まい)てぞ恐怖(おそれ)ける。同年四月/改元(かいげん)ありて貞永元年(てうゑいくわんねん)と改(あらた)む今年(ことし)
五月に。武蔵守泰時(むさしのかみやすとき)。兼(かね)て天下の政道(せいたう)の定式(ぢやうしき)を立(たて)られんとて。玄番允康(げんばのぜうやす)
連(つら)に仰合(おほせあは)せられ。法橋圓全(ほつけうゑんせん)をして執筆(しゆひつ)せしめ。則(すなはち)五十ケ/条(でう)を定(さだ)めらる。同七月
十日/政道(せいたう)に私(わたくし)なき趣(おもふき)を起請文(きしやうもん)して。評定衆(へうでうしゆ)十一人/連署(れんちよ)す。則/相模守(さがみのかみ)時(とき)
房(ふさ)。武蔵守泰時(むさしのかみやすとき)。此(この)起請文(きしやうもん)に印形(いんげう)を居(すへ)られ。今日(けふ)よりして後(のち)。訴論(そろん)の是(ぜ)
非邪正(ひじやせう)。堅(かた)くこの法を守(まも)りて。裁断(さいだん)すべくの旨(むね)を定(さだ)められしは。伝(つた)へ聞(き)く
藤原淡海公(ふぢはらたんかいこう)。養老(やうらう)二年に。律令(りつれい)を撰(せん)せられし。夫(それ)は天下(てんか)の亀鑑(きかん)。これは
関東(くわんとう)の鴻宝(こうはう)。今世迄(いまのよまで)も。貞永式目(てうゑいしきもく)と仰(あふ)ぎ。天下/国家(こくか)の政(まつりこと)皆(みな)これに
漏(も)るゝことなく。仁譲廉義(しんじやうれんぎ)の軌範(きはん)。国家安泰(こくかあんたい)の宝典(はうてん)といふべし。扨(さて)も泰時(やすとき)
斯(か)ばかり国政(こくせい)に私(わたくし)なく。仁施(じんせ)を専(もつぱ)らとせらるゝと雖(いへど)も。いかなる天の機運(きうん)にや
去年(きよねん)今(こ)とし打継(うちつゞ)き。風雨(ふうう)時(とき)となく屢々(しば〳〵)起(おこ)り。洪水地震(こうずいぢしん)度々(たび〴〵)にして。天災(てんさい)
地妖(ちよう)止(やむ)ときなし。これが為(ため)天下(てんか)飢饉(きゝん)して。米穀(べいこく)の尊(たふと)き事(こと)は珠玉(しゆきよく)のごとく