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厚(あつ)く礼謝(れいしや)をのべ。懇(ねんごろ)に使者(ししや)をねぎらはる。爰(こゝ)によつて時々刻々(しゞこく〳〵)のおくり物(もの)。
矢来(やらい)の内外(うちと)に山(やま)をなす。泰時(やすとき)も。爰(こゝ)に始(はじめ)て其(その)遠計(ゑんけい)をしり。則(すなはち)見(み)
舞(まひ)資施(しせ)として。米弐百石/鳥目(てうもく)百貫を賜(たま)ひ。猶(なほ)日々(にち〳〵)に品々(しな〳〵)の資(し)
料(れう)を与(あた)へらる。故(かるがゆへ)に数日(すじつ)施(ほどこす)といへども。物(もの)尽(つく)ることなく。尤(もつとも)往来(わうらい)の旅人(りよじん)には。
その行(ゆく)べき行程(かうてい)の日数(ひかず)をはかり。焼米(やきこめ)又は餅等(もちとう)をたまひ。孤独(こどく)の者(もの)
は仮屋(かりや)にとゞめて。薪水(しんすい)の役(やく)をつとめさせ給ふが故。溝壑(かうがく)に顚倒(てんとう)せず。
道(みち)に餓死(がし)を見ず。自(おのづ)から日々(にち〳〵)に国民(こくみん)穏(おだやか)にして。おのれ〳〵が職業(しよくけう)を励(はげ)み。
これ全(また)く若君(わかぎみ)の仁恵(じんけい)による処(ところ)と。貴(き)となく賤(せん)となく。戒寿丸を尊(たふと)み。
嗚呼(あゝ)此君(このきみ)。早(はや)く天下(てんか)の政治(せいじ)を執(とり)給へかしと。願(ねが)はぬ者(もの)はなかりけり
戒寿丸謙遜戒従臣話(かいじゆまるけんそんしうしんをいましむこと)
寬喜(くわんき)三年十月。将軍家(しやうぐんけ)御祈願(ごきくはん)の事(こと)まし〳〵。二階堂(にかいたう)のうちに。五大(ごたい)
明王堂(めうわうだう)を御建立(ごこんりう)あるべき台命(たいめい)あつて。工匠棟梁(たいくのとうれう)。矢切(やきり)次郎大夫/奉(うけ給はり)。