Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 78

ページ: 78

翻刻

其(その)稽古(けいこ)を見物(けんぶつ)せらる。于爰(こゝに)海野(うんの)左衛門/督(せう)幸氏(ゆきうぢ)といふ者(もの)あり。故頼朝(こよりとも) 卿(けう)の御(おん)とき。天下(てんか)に八人の射手(ゐて)に撰(えら)はれたる一人(いちにん)にて。射術(しやじゆつ)の好手(めうじゆ)故実(こじつ)堪(かん) 能(のふ)の者(もの)なりしが。今日(けふ)泰時(やすとき)。此(この)幸氏(ゆきうぢ)を招(まね)きて。時頼(ときより)の稽古(けいこ)を見せしめ てのち。幸氏(ゆきうぢ)に宣(のたま)ひけるは。抑(そも〳〵)当社(たうしや)流鏑馬(やぶさめ)は。元来(もとより)天下安全(てんかあんせん)国家(こくか) 長久(ちやうきう)の神事(じんじ)にして。聊(いさゝか)も非礼(ひれい)あるまじき事/勿論(もちろん)なり。しかるに今般(こたび)五郎 時頼(ときより)台命(たいめい)によつて。射人仕(ゐてにつかふまつ)ると雖(いへど)も。いまだ幼稚(やうち)にして其任(そのにん)に堪(た)えざらん 事を恐(おそ)る。尤(もつとも)射芸(しやげい)は未熟(みじゆく)なりとも。流石(さすが)に進退(しんたい)の礼式(れいしき)。作法(さはふ)を乱(みだ) さゝらん事を希(こひねが)ふ。貴老(きらう)この術(じゆつ)に感能(かんのう)なれば。些少(すこし)も憚(はゞか)り隔(へだ)つる 事(こと)なく。遺失(ゐしつ)あらば教諭(きやうゆ)を加(くは)へ給へと有(あり)ければ。幸氏(ゆきうぢ)頓首(とんしゆ)して。物員(ものかず) ならぬ某(それがし)に。斯(かく)懇(ねんごろ)に宣(のたま)ふこと。家(いへ)の面目(めんぼく)。犬老(けんらう)の身(み)に於(おい)て感佩(ありがたく)こそ 思ひ侍(はべ)れ。たゞ今(いま)時頼君(ときよりぎみ)。御稽古(ごけいこ)を拝見(はいけん)仕(つかまつ)る処(ところ)。生得(せうとく)の堪能(かんのう)。その 始末(しまつ)神妙(しんめう)なること。憚(はゞかり)ながら感(かん)ずるに堪(たえ)たり。去(さり)ながら。今(いま)進(すゝ)み出(いで)給ふ時(とき)