Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 85

ページ: 85

翻刻

殊(こと)に当社(たうしや)は。故頼朝卿(こよりともけう)。蛭(ひる)が小島(こしま)より起(おこつ)て。平家(へいけ)を西海(さいかい)に沈没(ちんほつ)せしむる までに。人命(じんめい)を害(かい)する事/幾万人(いくまんにん)。よつて文治(ぶんち)四年/已来(このかた)毎年(としごと)に数万(すまん)の 魚鳥(ぎよてふ)を放生(はうじやう)し給ふ事/殊更(ことさら)厳重(けんぢう)なり。去程(さるほど)に北条(ほうでう)五郎/時頼(ときより)は。今(け) 日(ふ)流鏑馬(やぶさめ)の台命(たいめい)を蒙(かうふ)り。朝(あさ)まだきより設(まうけ)の席(せき)に着座(ちやくざ)して。その 時刻(じこく)を待(まち)けるに。恒例(かうれい)の法式(はふしき)。さま〳〵終(をは)りて。已(すで)に其時(そのとき)に及(およ)びしかば。 時頼(ときより)其日(そのひ)の行装(いでたち)には。薄紅梅(うすかうばい)の肌着(はだき)に紫錦(むらさきにしき)の裲襠(れうとう)を掛(か)け。白綾(しらあや)の 小袴(ごはかま)に。豹(ひやう)の皮(かは)の行縢(むかはぎ)。騎射笠(きしやかさ)には真紅(しんくれなひ)の紐(ひも)をしめ。連銭葦毛(れんぜんあしげ)の 馬(うま)に。五禄(ごろく)の鐙(あぶみ)をかけ。金/覆輪(ふくりん)の鞍(くら)を置(おき)。緋(ひ)の三(さん)がいに厚総(あつぶさ)かけたるに打(うち) 跨(またが)り。徐々(しづ〳〵)と歩(あゆま)せたるさま。実(げに)も北条の公達(きんだち)の。威(い)有(あつ)て猛(たけ)からず見えたり ける。泰時(やすとき)はじめ一門(いちもん)家族(かぞく)。其余(そのほか)大名小名(だいめうせうめう)御家人等(ごけにんら)。片唾(かたづ)を飲(かん)【のんヵ】で見(けん) 物(ぶつ)ある。左(さ)なきだに物見長(ものみだけ)なる人民(じんみん)。ことに才智(さいち)の聞(きこ)えある。時頼(ときより)の流鏑(やぶさ) 馬(め)。左(さ)こそ目醒(めさま)しかるらんと。弥(いや)が上(うへ)に群集(くんじゆ)し。瞬(またゝき)もせで見物(けんぶつ)す。時頼(ときより)