← 前のページ
ページ 86 / 491
次のページ →
翻刻
聊(いさゝか)臆(おく)する気色(けしき)なく。法(はふ)を正(たゞ)して馬場(はゞ)に入(いり)三度(さんど)巡乗(わのり)し一鞭(ひとむち)打(う)ち。馬(うま)ををど
らせ一二三(いちにさん)。たてたる的(まと)の真直中(まつたゞなか)。将発々々(はつし〳〵)【為発ヵ】射(い)すまし給ふ。射術(しやじゆつ)馬術(ばじゆつ)の式(しき)
法(はふ)節度(せつと)。一(ひとつ)も欠(かけ)たる事なければ。知(しる)もしらぬも数万(すまん)の見物(けんぶつ)。異口同音(いくどうおん)に
射(い)たり〳〵と感称(かんしやう)の声(こゑ)止(やま)ざりけり。夫(それ)より十/番(ばん)の競馬(くらべうま)。佐渡前司(さどのせんし)已下(いか)是(これ)
を勤行(つとめ)。目出度(めでたく)諸儀式(しよぎしき)をはりける。抑(そも〳〵)時頼(ときより)幼稚(やうち)にして。才智(さいち)抜群(ばつくん)発(ばつ)
明(めい)し。諸術(しよじゆつ)にも又(また)暗(くら)からぬ。其(その)神妙(しんめう)上(か)み将軍(しやうぐん)より。下(しも)賎女(しづのめ)まで恐(おそ)れつゝ
此君(このきみ)成長(せいてう)して執権(しつけん)となり給はゞ。彼(かの)堯(けう)舜(しゆん)の御代(みよ)に等(ひと)しく。万民(ばんみん)歓楽(くはんらく)の
果(くは)を得(う)べしと。行末(ゆくすゑ)頼母(たのも)しくそ仰(あふ)ぎける
正覚坊鉄心潔死話(しやうがくばうてつしんけつしのこと)
嘉禎(かてい)四年/改元(かいげん)ありて。歴仁(れきにん)と号(がう)し。又/二年(にねん)にして。延応元年改(ゑんわうくはんねんとあらた)む。今(こ)
年(とし)承久乱後(ぜうきうらんご)。隠岐(をき)の国(くに)へ遷幸(せんかう)ましませし。後鳥羽院(ごとばのいん)。かの島(しま)にて崩(はう)じ
たまひ。鎌倉(かまくら)には北条時房(ほうでうときふさ)および三浦義村(みうらよしむら)卒去(そつきよ)ある。翌年(よくねん)又/改元(かいげん)