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爾也(しかなり)〳〵と。我(われ)に問(と)ひ。我(われ)に答(こた)へて。直(たゞち)に身(み)を翻(ひるがへ)して。行合(ゆきあひ)川(かは)の源(みなもと)なる。音無(おとなし)
の滝(たき)の逆流(げきりう)に身(み)を浸(ひた)し。偏(ひとへ)に愛欲(あいよく)の念(ねん)を断(た)ち。清浄(しやう〴〵)心地(しんち)に至(いたら)ん事(こと)を立(りう)
願(ぐはん)し。三日三夜(さんしつさんやの)荒行(あらぎやう)し。目瞬(めまじろが)ず肌緩(はだへたゆま)ず。清涼水(しやうれうすい)にて我(わが)明鏡(めいけう)をそゝぐさま。
彼高雄(かのたかを)なる文覚上人(もんがくしやうにん)。那智(なち)の瀑泉(たき)に行(ぎやう)せしも。是(これ)にはいかで益(まさ)るべきと。殊(こと)に
尊(たふと)く覚(おぼ)えけり。実(げに)にや一心(いつしん)動(うご)かざれば。万物(ばんもつ)転倒(てんどう)せずと。明王(めうわう)の冥助(みやうじよ)こゝに
奇瑞(きずい)を得(え)て。迷路(めいろ)の霞(かすみ)忽(たちまち)はれ。快然(くはいぜん)たる事/夢(ゆめ)の覚(さめ)たるがごとく。本原(ほんげん)【左ルビ「もと」】
の潔白堺(けつはくかい)【左ルビ「きよきこころ」】に帰生(きしやう)【左ルビ「かへり」】せしかば。正覚(せうがく)は歓喜踊躍(くはんきゆやく)して。明王(めうわう)を礼拝(らいはい)し了(おはり)て。熟(つく〳〵)
と思ひけるは。夫(それ)娑婆世界(しやばせかい)にあること須臾(しばらく)なりといへとも。凡身(ぼんしん)未練(みれん)の浅猿(あさまし)
さは。六根(ろつこん)の迷(まよ)ひ何時(いつ)をはかるべからず。抑(そも〳〵)我(われ)七才にて釈門(しやもん)に入(いり)経論(けうろん)に眼(まなこ)を晒(さら)
し。法聞(はふもん)に耳(みゝ)を洗(あら)ふ事(こと)三十/年(ねん)。日々(ひゞ)の勤行(ごんぎやう)更(さら)に怠(おこた)らざるが故(ゆへ)。曾(かつ)て思(おも)ふ。何(なに)
者(もの)か我(わが)この眼目(がんもく)。この心意(しんい)を犯(おか)し汚(けが)し得(え)んやと。難有(ありがた)かりしも自然(をのつから)。驕慢(をこりあなどる)
の心(こゝろ)より。一時(いちじ)に淫念(いんねん)発動(ほつどう)し。眼心(がんしん)ともに迷冥(めいめう)して。既(すで)に大罪極悪(だいざいごくあく)の人(ひと)と