翻刻
【右丁】
煉り用ゆ染は煉て後染てもよし又煉なから染むる也
一地竪糸は生すか一本糸を用ゆ合せ糸は不用也依之
並すかにては細き故並すがよりは蚕六ッ七ッも多く附る
外の織物は生糸を用といへとも大凡半煉或は素煮
をして用ゆるなり天鵝絨の地合にかきり一切不練
其侭染て経るなり
一竪糸は捻強きは悪し弱くして力のつよき糸を撰
なり上州厩橋辺より出る糸は上品にあらす奥州福
島辺之糸も不宜也奥州南都【注①】より出る糸を京師
抔にては多く用ゆと云然も極上の糸と云は飛弾【注②】国
縞【注③】田郡より出る糸なり然も多く糸不出仍て南部
の産を大慨上として用ゆるなり
一諸国より京師へ糸出る所之大凡聞く所をしるす
【左丁】
近江国より出る糸を浜(はま)糸と云美濃国より出る糸を
そたいとゝ云/繻子(しゆす)に用て極上の糸なりとそ飛弾
国より出る糸を高山と云又増【注④】田と云是は天鵝絨
に用て極品と云加賀国より出を白糸と云上州厩
橋より出るをまひ【注⑤】橋とも又むすひ糸とも云甲州より
出るを甲州と云奥州所々より出るなれとも押なへて
南部福糸【注⑥】と両名を唱るなり此糸天鵝絨に用て上也
福しま糸は毛糸に用て上なり能く毛立なり紅染
にして紅不残染込むなり外の国の糸は紅染には染
付悪し
一毛糸長五丈位尤/線鉄(はりがね)の大小により毛糸の経尺長
短あるべし
一中の品にて大凡糸/積(つもり)地竪糸懸目三十目耳糸懸目
【注① 「都」は「部」の誤ヵ。NDLの翻刻本は「都」とあり】
【注② 「飛騨」は「飛弾」とも表記。NDLの翻刻本には「弾」に「騨」の傍記あり】
【注③ 「縞」は「益」の誤ヵ。NDLの翻刻本には「縞」に「益」の傍記あり】
【注④ 「増」は「益」の誤ヵ。NDLの翻刻本には「増」に「益」の傍記あり】
【注⑤ 「ひ」は「へ」の誤ヵ。NDLの翻刻本には「ひ」に「へ」の傍記あり。「まひ(へ)橋」は「前橋」ヵ】
【注⑥ 「糸」は「島」の誤ヵ。NDLの翻刻本には「糸」に「島」の傍記あり】