翻刻
馬場先御門日比谷御門外桜田御門姫御門幸橋
御門数寄屋橋御門虎之御門吹上御門常盤橋
御門筋違御門四谷御門浅草御門清水御門平川
口御門神田橋御門壱ツ橋御門雉子橋御門小石
川御門和田倉御門市谷御門等也其外曲輪の石
垣礎まて悉く崩れ倒れ類かゝる所に甲府中
納言綱豊公桜田御殿ゟ出火黒煙天を覆ひ
猛火炎をちら〳〵折節風烈しく五丁十丁飛越
へもへ移りけるゆへ諸人肝を潰し逸足を出し
逃あるく二ツの難に男女魂をとはし騒動す
行先寸地もなく大路を閉る中に武家之士鑓
長刀を以て乗物之先を払逃行有地震少しし
つまりけれは火事も静に鎮りける間家財雑
具おひかゝひ家々に帰らんとする時寅之刻と覚し
き時に海辺俄に動揺してすわ津浪よと云ける
小市丁武家一同に又驚き逃んとす此時海上を
見るに髙浪海面三町計も打かへると見へたり
然れ共無程鎮りける
一又相州小田原房州総州築州地震総州者江戸の
一倍せりと也加州廿二日の夜大雷所々に落る事
三七ヶ所人死夥し相州小田原は廿二日山川万里
ひゝき岩石を震ひ出し大嶽をく崩せり小田原
の城下町々大半倒れ其中に漸逃れけるも有け
る所に城中ゟ出火して風烈しく四方え吹散し
在々時時に炎盛んに僧俗男女家財を捨死
をまぬかれける所に廿三日朝津浪海面十四五